一キロ、二キロ、三キロ、
潮の匂いは離れて行く。
一歩、また一歩、と
ぬかるんだ道を踏みしめる靴に、
塩辛い水は沁み込んでいく。
そのようにして
僕らはあの日からひたすら歩いて来た。
古代の遺跡のような海辺
真っ黒な海嘯が薙ぎ倒した
目印は、ない
取り残された
五つの瀬が
またその向こうの
五つの瀬を
そのようにして
里程標は
果てしなく遠く、
目眩がするほどに続いている
誰かの墓標のように。
振り返ればまだ
巨大な海嘯が見えるだろう。
真っ黒な闇が
野末の向こうに拡がっている。
誰も
その壁の向こうを知らない。