鶸(ひわ)が一羽
翔んでいった。
天高く舞い上がった鳥は
あっという間に蒼穹(そら)に消え、
わたしたちの瞳(め)からは見えなくなった。
鳥は
どこへ行くのだろう。
かつて古人は
亡くなった人たちの魂が
鳥になって
蒼穹を駆け巡ると考えたという。
なら鳥になった魂は
一体どこへ行くのか。
南中した太陽が、
そんなわたしの当て所(ど)のない問いを嘲笑うかのように、
今日も煌々と地上を灼き尽くしている。
まるであの日と同じように。
2015年8月9日。
戦争の死者たちの、
平穏への願いを引き継ごうと
心に決めつつ、
再び、蒼穹を見挙げる。