I.ベルイマン監督の『処女の泉』を観た。

処女の泉 <HDリマスター版> 【DVD】/キングレコード
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ベルイマン作品はこれで二本目だが、
中世?の北欧を舞台にした完全な寓話、
娘を殺された両親と従者の復讐・救済の劇といえるだろう。

教会へロウソクを持っていくよう言われた娘。
女従者も一緒についていくが、
前夜に自分が想いを寄せる男と
娘が踊っていたことが気に食わない従者は
わざと娘から離れ一人で森へ行かせる。
森で羊飼いに扮した悪党兄弟に出くわしてしまった娘は
不幸にも陵辱され殺害されてしまう。
あとから追ってきた女従者もその光景を見て石は手にしつつも、
嫉妬心から何もせず見殺しにしてしまう。
数日後、いなくなった娘を按ずる両親たちのもとに、
偶然にも娘を殺した兄弟たちが訪れ一夜の宿を借りる。
始めは快く宿を貸した両親だったが、
男たちが取りだした絹の服を見て娘のものだと悟った両親は
復讐を果たす。
その後、森へ娘を探しに行った一族は、
娘の遺体の下から泉が滾々と湧き出すという
奇蹟に遭遇する。

一見して人間の罪と罰、純粋さと汚れ、復讐と救済について
描かれた映画だと分かるが、
ベルイマンの凄い所は舞台を中世~近世に設定し、
近代法的なものがない中での道徳あるいは倫理的な問題が
テーマであることを明瞭にしているところだろう。
中世を舞台にした作品は決して少なくはないと思うが、
自分が描きたいテーマと映像美のために
ここまでストイックに突き詰めた監督も
珍しいんじゃないかと思う。

北欧の美しい景色の中で繰り広げられる
人間の憎悪と赦しについての物語は、
今なお色褪せることがないどころか、
むしろ極めて現代的な気がした。