細やかな布を
重ねた雲にはこばれて
夕暮れに染まっていく
願いがひとつかなったら
絶望にひとつちかづくこと。
幕開けはいつもかすんで
それでもうごかない 雲の波
みんなそろって事務的な椅子に身をゆだね
すでに最後にむかっている
夏なんて存在しなかったように
さらさらと雪が降る
三月のしまいに
さらさらと雪が降る
永久のなか
さらさらと雪が降る
さらさらと雪をうけとめて
航空灯火が待っている
- 隣人のいない部屋/思潮社

- ¥2,376
- Amazon.co.jp