職場で朝起きたら、

TVにW杯開幕戦の中継が映っていた。

ちょうどブラジルが一点入れられた直後あたりで、

仕事しながらチラチラ見てたら、

ネイマールが見事な逆転PKゴールを決めていて、

やっぱりネイマール凄いなと思いながらも、

全然別のことを考えていた。


世界中のサッカー小僧が待ちわびる4年に一回の祭り、

しかも今回はサッカー王国ブラジルでの開催ということで

ブラジルの人たちはさぞ熱狂してるだろうと思いきや、

開幕前から盛んに報道されていたのは

連日のW杯開催反対のデモの盛り上がりぶりだった。

背景にあるのは08年リーマン・ショック以降続いていた

米の量的金融緩和が縮小されたことによる景気低迷だそうだ。


ブラジルはもともと世界に類を見ない格差社会だった。

相次ぐ内政の混乱や常態化したインフレで格差が拡大、

中流以上の家は

強盗対策のために高い塀と金網で囲われてるのが普通で、

日本人も含め海外の旅行者や富裕層は

常に誘拐ビジネスの標的とされた。


03年労組出身で左派政党・労働者党のルラ大統領が誕生

(ちなみに「ルラ」は通称で、「イカ」という意味だそうな)、

ルラの現実主義的な政策と折からの好景気で

「BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、シンガポール)」

並び称されるほどの経済成長を果たし貧困層も大きく減ったが、

リーマン・ショックの影響で成長に陰りが見え始め、

昨年決定された米の量的緩和縮小によって成長がより減速した。

その結果、以前に比べればだいぶ解消されたとはいえ、

依然として大きなままの社会格差が残り、

「ファベーラ」と呼ばれるスラム群周辺では

いまだ治安は改善されず、

格差など社会の矛盾に気づき始めた若い中流層を中心に、

昨年あたりからデモなど大きな運動に発展 してるという。


今のブラジルは、

日本で言えば丁度60年代末の状態に結構近いのかもしれない。

60年代末、日本では学生運動が大きな盛り上がりを見せ、

同時期の欧米同様、

学生たちが社会の矛盾に対して多くの異議申し立てを行った。

ブラジルが日本と異なるのは、

日本の学生運動が比較的学生たちの間だけに止まったのに対し、

結構社会的な広がりを見せているところだろうか。

その点では、日本よりも欧米に近いかもしれない。

欧米ではそうした運動はその後、

人権運動や環境保護運動などにつながっていったと

言われるから、

ブラジルの場合も、

もしかしたらそうした広がりを見せるのかもしれない。


リオのカーニヴァルや

それを題材にした映画『黒いオルフェ』などでもわかるように、

ブラジルの人々はもともと辛い現実を明るいラテン気質で

乗り越えて(あるいはやり過ごして)きた。

先住民や黒人奴隷の子孫など、

白人の下で耐え忍んできた人たちが一年に一度、

上下貴賤関係なく参加できるのがカーニヴァルであり、

その意味ではカーニヴァルは秩序維持のためのガス抜き、

とも言えるだろう。

W杯もそうしたガス抜きの意味合いを持つだろうが、

抗議運動に参加してる人たちは

そうした社会構造に矛盾や違和感を感じてるんだろうし、

そうした感覚そのものは、

東日本大震災以降を生きる僕ら東北人の一部とも、

相通じるものがあるんじゃないかと思う。


と言って、W杯を純粋に楽しみたい気持ちもあるけど(苦笑)