映画『故郷よ』を観た。
故郷よ [DVD]/角川書店

¥5,076
Amazon.co.jp
原題は『land of oblivion』つまり「忘却の土地」。
1986年4月26日。
ソ連南西部(現ウクライナ北部)のチェルノヴイリ原発で
当時人類史上最悪と言われた原発事故が起きた。
そのチェルノヴイリから約3キロ離れた町プリピャチでは、
アーニャとピョートルがまさに結婚式を挙げている最中で、
発電所で働く技師アレクセイと、
その息子ヴァレリーをはじめとする彼の家族は
いつもと変わらない穏やかな日常を過ごしていた。
が、結婚式のさなかに「森林火災」のために招集がかかった
新郎のピョートルはそのまま帰って来ず、
発電所から事故の連絡を受けたアレクセイは
直感的に危険を悟り、
家族に逃げるように言うと自分は街に留まり、
道行く人に危険を知らせようとする。
やがて4月29日、プリピャチ市民に避難命令が出る。
10年後、アーニャはプリピャチに戻りツアー客相手のガイドをし、
ヴァレリーはアレクセイが死んだと信じ込もうとする母親に
連れられて誰もいなくなった生まれ故郷プリピャチに降り立つ。
観終わった後、一言では言い表せないものが残る。
廃墟となった生まれ故郷、
その只中に生きるアーニャたちの複雑な心情は、
おそらく同様の事故の被災者たちでなければわからないだろう。
戻れないとはわかっていても、
自らの記憶の一部となっている街への限りない愛着が、
むしろ強烈な軛となって現在の自分を苛む。
そして森林警備隊のニコライのように、
危険だとは知りつつも、
現在も汚染区域に住み続ける住民たちもいる。
そこで無責任に「避難しろ」と言うことは、
「動くな」と言うのと等しい暴力性を持つ。
もちろん、高濃度の放射線が持つ危険性には疑いの余地はない。
特に当時のソ連当局はスウェーデンの調査機関が調査するまでの
2日間に亘って事故を内外に公表しなかったために、
近隣住民はじめヨーロッパ中に放射性物質を拡散させ、
多くの被曝者を出すことになってしまった。
その罪の重さは計り知れない
(同様のことは東日本大震災の直後に
SPEEDIの結果を公表しなかった日本政府に対しても言えるが)。
ウクライナや近隣諸国にいる避難民、
事故処理にあたった労働者などの間では今も癌や白血病などで
苦しむ人々が大勢おり、
また、そうした人々の間では自殺率も非常に高いと言われている。
事故後、同じく原発を持っていた日本では、
「あの事故は共産主義国だから起きた」という迷信が
まことしやかに信じられてきた。
しかし、
少なくとも管理体制の上では日本もソ連と大差なかったことが
東日本大震災以降、証明されてしまった。
そうした中で、管理体制をほとんど見直すこともなく、
今また原発が再稼働されようとしてる現状を、
僕はどうしても肯うことができない。
故郷よ [DVD]/角川書店

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原題は『land of oblivion』つまり「忘却の土地」。
1986年4月26日。
ソ連南西部(現ウクライナ北部)のチェルノヴイリ原発で
当時人類史上最悪と言われた原発事故が起きた。
そのチェルノヴイリから約3キロ離れた町プリピャチでは、
アーニャとピョートルがまさに結婚式を挙げている最中で、
発電所で働く技師アレクセイと、
その息子ヴァレリーをはじめとする彼の家族は
いつもと変わらない穏やかな日常を過ごしていた。
が、結婚式のさなかに「森林火災」のために招集がかかった
新郎のピョートルはそのまま帰って来ず、
発電所から事故の連絡を受けたアレクセイは
直感的に危険を悟り、
家族に逃げるように言うと自分は街に留まり、
道行く人に危険を知らせようとする。
やがて4月29日、プリピャチ市民に避難命令が出る。
10年後、アーニャはプリピャチに戻りツアー客相手のガイドをし、
ヴァレリーはアレクセイが死んだと信じ込もうとする母親に
連れられて誰もいなくなった生まれ故郷プリピャチに降り立つ。
観終わった後、一言では言い表せないものが残る。
廃墟となった生まれ故郷、
その只中に生きるアーニャたちの複雑な心情は、
おそらく同様の事故の被災者たちでなければわからないだろう。
戻れないとはわかっていても、
自らの記憶の一部となっている街への限りない愛着が、
むしろ強烈な軛となって現在の自分を苛む。
そして森林警備隊のニコライのように、
危険だとは知りつつも、
現在も汚染区域に住み続ける住民たちもいる。
そこで無責任に「避難しろ」と言うことは、
「動くな」と言うのと等しい暴力性を持つ。
もちろん、高濃度の放射線が持つ危険性には疑いの余地はない。
特に当時のソ連当局はスウェーデンの調査機関が調査するまでの
2日間に亘って事故を内外に公表しなかったために、
近隣住民はじめヨーロッパ中に放射性物質を拡散させ、
多くの被曝者を出すことになってしまった。
その罪の重さは計り知れない
(同様のことは東日本大震災の直後に
SPEEDIの結果を公表しなかった日本政府に対しても言えるが)。
ウクライナや近隣諸国にいる避難民、
事故処理にあたった労働者などの間では今も癌や白血病などで
苦しむ人々が大勢おり、
また、そうした人々の間では自殺率も非常に高いと言われている。
事故後、同じく原発を持っていた日本では、
「あの事故は共産主義国だから起きた」という迷信が
まことしやかに信じられてきた。
しかし、
少なくとも管理体制の上では日本もソ連と大差なかったことが
東日本大震災以降、証明されてしまった。
そうした中で、管理体制をほとんど見直すこともなく、
今また原発が再稼働されようとしてる現状を、
僕はどうしても肯うことができない。