映画『夏の終り』を観た。

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原作は瀬戸内晴美(現・寂聴)さん、

監督は『海炭市叙景』の熊切和嘉さん。


敗戦後まもない東京。

切り絵作家で、

妻子ある売れない作家・小杉慎吾と不倫関係にある相澤知子。

年上の小杉の過保護なまでの愛を十分に受けながら、

何か満たされないものを感じているところに、

かつて家庭を捨てて一緒になった年下の男・木下涼太が現れ、

小杉の妻も合わせた四角関係が展開される、という話。


原作は1962年の発表で当時は結構評価されたようだが、

今から見れば時代がかっていて、

筋自体はありきたりで冗長な感じがしてしまう。

が、映像や、

『海炭市~』同様ジム・オルークの手になる音楽は瑞々しく、

素晴らしいと思った。

主演の満島さんの醸し出す空気感も期待通りで、

そういう意味ではよい作品だったと思う。


この作品を出す前、原作者の瀬戸内晴美さんは、

実質的な文壇デビュー作『花芯』で

批評家に「子宮作家」のレッテルを張られ、

文芸誌からの執筆依頼はなく、

婦人誌など、様々な媒体に作品を発表していたようだ。

それ自体、ひとつのセクハラじゃないかと思うが、

今なお残る、

女性としてこの社会で生きることの難しさというものに、

想いを致さざるを得ないエピソードだと思う。