生死の生をほっぽり出して

ねずみが一匹浮彫みたいに

往来のまんなかにもりあがっていた

まもなくねずみはひらたくなった

いろんな

車輪が

すべって来ては

あいろんみたいにねずみをのした

ねずみはだんだんひらたくなった

ひらたくなるにしたがって

ねずみは

ねずみ一匹の

ねずみでもなければ一匹でもなくなって

その死の蔭すら消え果てた

ある日 往来に出て見ると

ひらたい物が一枚

陽にたゝかれて反っていた




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