書かれた言葉は消せる
消しゴムで
インク消しで
Deleteキーで
だけど
声になった言葉は消せない
いったん大気に放射されてしまうと
いつまでも 漂っている
木々の間を漂っている
青空に向かって漂っている
ラジオから聞こえてくる声は
地理的に遠いだけじゃなくて
もしかすると
すごく時間を遡っている声なんじゃないかな
だから 今こうやって
しゃべっている僕の声も
僕は消したい
抹消したい
消えないから
あなたの心の中に残ってしまうから
消して
blankにしたい 空っぽにしたい
空っぽにしないと
次の言葉が出てこない
地面の下から
空の上の方から
木々の間から
もしかすると
海の深い底の方から
言葉は
僕の足を通って
僕のおなかを通って
僕の口まで届く
その言葉を自由にするために
忘れてください
今僕がしゃべったこと
全部忘れてください
それで空っぽになって
家へ帰ってください。