かみさまの匂いがする夜は
どうやっても眠れない
晒されているのだ、わたしの
愚かさや拙さが
クローゼットには
脱皮したわたしの産物が
きれいに整列していて
幼い。
そう云っておとこは
いつも笑った
わたしも笑った
笑いながら
また産まれつつある
細胞を
くまなく撫でた
かみさまの匂いがする夜は
たいてい、過去に引き戻される
手をつなぐ重要さを
惰性にしている罪は
どこからやってきたのだろうか?
今夜も産まれるというのに
わたし
は髪さえ容易に切る
おとことの一センチの隙間に
見知らぬおんながさらりと入った
新しく産まれた
わたしだった
ならば
このわたしは廃棄物
業務用のゴミ袋でなければ
はいらないの
あまりにも
産まれすぎて、
かみさま
あなたの匂いを
わたしは手のひらにまるめるのです
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