えんじゅです。
久しぶりに映画をはしごして観てきました(;^ω^A
先日のアカデミー賞で主演のメリル・ストリープが主演女優賞に輝いた
『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙(原題;Iron Lady) 』と、
Bjorkが主演した『ダンサー・イン・ザ・ダーク』で知られる
ラース・フォン・トリアー監督の新作『メランコリア 』です。
『メランコリア』は正直微妙(映像はきれい)でしたが、
『マーガレット・サッチャ-』は近年まれに見るくらい
素晴らしかったですо(ж>▽<)y ☆
マーガレット・サッチャーは1979~90年の長期にわたって、
イギリス初の女性首相を務めた政治家です。
僕が物心ついた頃にも、
まだ首相としてTVなどに映っていたのを朧気ながら覚えていますが、
政治家を引退し、最愛の夫を亡くした現在、
認知症と戦っているというニュースを何年か前にニュースで見て、
ふ~ん、と思った記憶があります。
その在任中、イギリスはまさに波乱の時代だったと思います。
サッチャーが首相になる前後、
イギリスは長年の高福祉・高負担の政策と折からの石油危機によって
財政難に陥り、
経済は「イギリス病」と呼ばれた長い停滞期にありました。
労働組合のストライキなどによって街はゴミで溢れかえり、
墓地には埋葬を待つ棺がいくつも並べられていたそうです。
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これに対してサッチャーは規制緩和、民営化、減税を主軸とする、
いわゆる「新自由主義」の政策で対応しました。
外資の参入などもあって政策は功を奏し、イギリス経済は再浮上、
社会保障費の徹底的な削減などによって財政も健全化する一方、
教育や医療・福祉といった公的サービスは荒廃し、
病院では手術を何ヶ月も待たなければならなかったり、
教室や学校の設備などは何年も壊れたままだったりしたそうで、
また若者の失業率も長期にわたって深刻な状況に陥ったそうです。
(いわゆる「ニート」の問題も、こうした中で注目されだしました)。
特に炭鉱や工場の密集した北西部など地方の疲弊は悲惨で、
この時期のイギリスの様子は
『ブラス!』や『トレインスポッティング』や、あるいは
デレク・ジャーマン監督の『エンジェリック・カンヴァセーション』などに、
もっともよく表れていると思います。
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また、サッチャーは対外的には強硬姿勢をとりました。
1982年のフォークランド(マルビナス)紛争では一切の妥協を許さず、
そうした政治姿勢から、
IRA(アイルランド共和軍)の爆弾テロの標的にもされました。
こうしたことからサッチャーは現在のイギリスでも毀誉褒貶が激しく、
「鉄の女(Iron Lady)」の異名もそこに由来しますが、
内実はとても家族思いの女性で、
特に陰になり日向になり彼女を支えた夫デニスに対する愛情は
計り知れず、この映画でもそれを軸に、
「マギー(マーガレットの愛称)」が描かれています。
おそらく僕も、政治的立場はサッチャーとは異にすると思いますが、
この映画の「マギー」に最大限の共感を抱くのは、
創り手側のそうした姿勢があるからでしょう。
特に主役のマギーを演じたメリル・スドリープは素晴らしく、
マギー本人が出演してるのでは?と思えるほどです(;^_^A
また、『まぼろし』式の現実と幻想(幻覚)が交錯する様式も、
マギーの認知症や孤独感を表すのにはかなり効果的だと思います
(『まぼろし』も夫を突然の事故で喪った女性の映画でした)。
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リーダーは孤独だとよく言われますが、
男社会の中で活動することや家族への負担から来るそうした孤独に
マギーが耐えることができたのは、
やはり夫であるデニスがいたからでしょうし、
彼を喪った後の彼女の孤独感は計り知れないものがあると思います。
冒頭からそれを思わすシーンの連続なので、
僕はもう、冒頭から泣き通しでした(;´▽`A``
たったひとつだけ残念な点を上げるとすれば、
やはり邦題のつけ方でしょうか。
特にサブタイトルの「鉄の女の涙」というのは余計のような気がしますし、
何かいかにも「涙」が主であるかのように思えてしまいます。
単純に、『鉄の女』でよかったのでは?
とにかく『マーガレット・サッチャー』、
ここ数年で最もおススメの映画です
ぜひお近くの劇場に観に行ってみてください
僕はDVD出たら絶対買おうと思います(笑)