雨が降ると
わたしたちの灯台は
夜の闇のなかに
霞んでしまう。
吹き荒ぶ嵐の中で
空を見上げる。
そこには
もう星々の明かりは見えない。
陸(おか)を目指していた
漁火たちはもう
どこにも見えない。
確かに其処にあった光。
月も見えない夜闇の底で
夜光貝たちは夢見る
蜃気楼のような明日を。
凍てつく潮風が
白い灯台の膚を洗う。
けれど明日もし晴れたならば
あの灯台へ行こう。
幸せだったあの頃のように。
胸一杯の想い出を携えて。
その想い出が消え去る前に。