再びえんじゅです。


『世にも奇妙な物語』を見てますテレビ

水川あさみさん主演の第3話「ベビートークA錠」を

見終わったとこですが、

世の子育て世代のお母さんたちへ向けた話というか、

考えさせられる話でしたね。


ストーリー的には子育てに悩む母親が

通りかかった怪しげな薬局で

赤ん坊の話してる内容がわかる薬を買うという、

『世にも~』にありがちな話ですが、

最後に水川さんが泣く赤ん坊に頬を寄せるシーンは、

100の言葉より1回の抱擁が効果的という、

心理学の実験を裏打ちしてるような気がします。


1958年、アメリカの発達心理学者ハリー・ハーロウは、

当時発達心理学の中で支配的だった子育てに関する考え方を

証明しようと、

ヒトに比較的近いとされるアカゲザルの赤ん坊を使って

ある実験を行いました。

それは布の母親ザルの人形と針金の母親ザルの人形とを作り、

赤ん坊ザルがどちらにより長く懐こうとするかを見るものでした。

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それぞれの人形には仕掛けがしてあり、

布の人形には内部に電球を入れて温かくなるようにし、

針金の人形にも同じように温かくなるよう細工、

また両方の人形に哺乳瓶のようなものをつけて

母乳が出るようにしました。


当初ハーロウは、赤ん坊ザルがどちらの母親にも

同じくらい懐くのではないかと考えていました。

それは当時の学界の主流でもあった考え方、

すなわち赤ん坊は気持ちよさや温もりといった二次的欲求より

空腹や痛みの回避といった一次的欲求を元に行動する

という考え方で、この考え方に従えば、

子ザルはどちらの母ザルにも引かれると思われたのです。


しかし、実験を通じて出された結果はまったく逆のものでした。

子ザルはミルクこそ両方の母ザル人形から飲みはすれ、

空腹を感じてないときはほとんど常に布の人形のほうに

しがみつき、常にその肌触りや温もりを求める様子を見せ、

ハーロウを驚かせました。


続いてハーロウは複数の子ザルを使い、

布グループと針金グループとに分け、同じ実験を行いましたが、

結果はやはり似たようなものとなり、

布グループの子ザルたちのほうが著しく人形に懐く様子を見せた

ということです。


ハーロウのこの実験結果は、

当時多くの児童養護施設の職員や里親たちを勇気付けたようです。

なぜならこの実験の結果は、

子どもと親との間に血縁関係があるかどうかだけでなく、

女性であるか男性であるかさえも、

適切な子育てが行われさえすれば関係がないのだということを

立証したからです。


それは言い換えれば子育ての社会化の合理性を

証明するものでもありました。

高度成長期以降、核家族化の進展に伴い、

子育ては家庭において特に母親が担うべきものという

暗黙の認識が流通し、高度成長を裏から支えていましたが、

江戸時代や昭和30年代くらいまでの日本を考えてみればわかるように、

子育てとは本来、社会共同体の中で行われてきたものですし、

そうでなければ子どもの志向の多様性や自由といったようなものは

保障されないでしょう。


実際、学生時代にゼミ授業の一環として、

わが子を虐待してしまった母親の講演を聴きに行った事がありますが、

社会的心理的な孤立が虐待の引き金になっていたということを、

その女性は話していました。


現在、児童虐待は日本でも大きな問題となっており、

年間数万件ものケースが報告されているといいます。

法律の整備により通報件数が上がったという要因はあるにせよ、

潜在的に多くのケースがあることは否めないでしょう。

子どもはもちろん、虐待をする親をもそこから救い出さなければ、

いずれこの国の子どもたちは健全さを失ってしまうでしょう。


そのためには一刻も早く、

育児の社会化を進めなければいけないような気がします。