えんじゅです。
ずいぶんご無沙汰してしまいました。
体調不良と多忙の上にPCの不調が重なり、
ペットは飼い主に似るといいますが、
持ち物も、持ち主に似るんだろうか?なんて馬鹿なことを
考えてしまいます
さて、先日のノーべル文学賞では、
日本では一般的には知名度の低い、
「隠喩の巨匠」と呼ばれるスウェーデンの詩人(僕も知りませんでした)
トーマス・トランストロンメルさんの受賞が発表されましたが、
ヨーロッパのみならず、実力がありながら世間的には知られていない
詩人というのは、まだまだたくさんいるのではないでしょうか。
イタリア現代詩を代表する詩人ジュゼッペ・ウンガレッティも、
そうした一人ではないでしょうか。
ウンガレッティは1888年エジプトのアレクサンドリアに生まれ、
その後イタリア経由でパリに渡り、
ピカソやモディリアーニといった画家や詩人のアポリネールと交流、
やがて第1次世界大戦が勃発するとイタリア軍の兵士として出兵、
砲弾飛び交う塹壕の中で幾多の傑作を物したといいます。
僕がウンガレッティの詩と出会ったのは、
大学時代、図書館でたまたま手に取った詩集がきっかけでした。
一読して自分の詩と共通したもの(感性というか)を感じ、
その後折りに触れて読み継いで来た詩は、たとえばこんな感じです。
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夢
波の下にためらいが砕けて
夜明けの光がまたさらわれてゆく。
銀色の飛翔とともに切れ切れの
煙にほのかに燃え上がる頬。
物音が麦わらの山に触れてくる。
けれども湖のまわりにはすでに榛(はしばみ)の木が
姿を見せた、夜明けだ。
眠りから目覚めへ、稲妻のごとく
飛び去ったもの、それが夢だった。
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上の詩もそうですが、ウンガレッティの詩には、
どこか寄る辺なさがあるような気がします。
その寄る辺なさが結局、
後年の『ピエタ』という作品でのキリスト教回帰につながっていくような
気がしますが、
いずれにしろ、帯にあるようなコスモポリタン的な雰囲気が、
僕にあっていたんじゃないかと、今では思っています。
最後にもう一つ、僕が好きな作品を上げておきましょう。
『詩人の秘密』という作品です。
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詩人の秘密
夜だけがわたしの道連れだ。
彼女とならばいつまでも過ごせるだろう。
一瞬一瞬、虚しくならない時を。
それにしてもあの脈搏を伝えてくる時は
倦むことなく、わたしを喜ばせてくれる。
それで思わず感じてしまうのだ。
影からまたもや引き離され
変ることのない希望が
新たな火をわたしのうちに掻きたて
あのように不死のものと思われた
あなたの地上の身振りとなって
沈黙のなかに形づくられてゆくとき、
光を。
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