えんじゅです。
大学の先輩が所属してる劇団
「TheatreGroup OCT/PASS」の新作公演、
『風来 ~風喰らい人さらい~』を観てきました。
きわめて風変わりな一家を通して、
風の吹かなくなった世界に風を吹かそうとする、
一種の群集劇。
そこに風の吹くまま気の向くままのバガボンドの親子と、
風を吹かせまいとしてあの手この手で
一家の邪魔をしようとする謎の3人組。
三者が入り乱れて繰り広げるドタバタ劇は
OCT/PASSお得意のスラップスティック・コメディー。
けれどもそこには単なるコメディーでは終わらない、
鋭い社会批評、政治批評が含まれています。
OCT/PASSの劇はいつもそうですが、
優れた?アングラ性、批評性も持ってるのです。
よく、選挙などで特定の党や候補者が大勝することを
「風が吹く」と言いますね。
直近では一昨年の夏、選挙で民主党が勝ち、
実に50年ぶりという歴史的な政権交代がありました。
「風」はそうしたものの隠喩でもあり、
または空気の淀み、社会やものの停滞を撹拌し、
新しく空気を入れ換えるという、より直接的な表現でも
あると思います。
民主党が政権与党の座についてまもなく1年半。
「風を吹かせたい」ということばには、
政権交代を経てもなお漂う、政治や社会、経済の停滞を
何とかしたいという、作者・石川裕人さんの思いでも
あるのでしょう。
僕はちょうど國分功一郎さんのブログで、
17世紀の科学者ホイヘンスの振り子の実験の話を
読んでいたこともあり、
観ていてどうしても、「システム」のことを
考えざるを得ませんでした。
http://ameblo.jp/philosophysells/entry-10796978451.html
ここ10年ほどのOCT/PASSの作品は
僕は大体見てると思いますが、
OCT/PASSの作品はそのどれもが、
「システム」との関わりについてのものだったと思います。
それは言語体系という意味での「システム」であったり、
作劇術(ドラマトゥルギー)という意味での「システム」であったり、
あるいは社会システム、政治体制という意味での
それであったりと、
一様ではない(多重的、と言うか)のですが、
とにかく「もの」の中心を担うものという意味での「システム」、
それへのレジスト(抵抗)だと僕は思っています。
この「システム」というのは、言ってみれば「壁」です。
先日の「壁と卵」の記事ではありませんが、
振り子時計がわれわれ一人ひとりの人間であるとすれば、
その性質を決めるのが「壁」なのです。
そして現代世界の「壁=システム」が行き詰まり、
世の中に停滞と淀みをもたらしてるとすれば、
「壁=システム」を交換することでしか、この問題は
解決しないのではないでしょうか。
「風を吹かす」ということは「壁」を替えることです。
「壁」を替える事で、われわれは今までとは違う仕方で
「共感」することができ、また世界を変える事ができると
思います。
怒りながら部屋の模様替えをする人がいないように、
それは決して暴力的、圧力的に行われるべきことでは
ないと思います。
エジプトでは今まさに、この「壁替え」の作業が進行中です。
ですが残念ながら、貴重な考古学的資料がある博物館が
襲撃、略奪され、70点もの資料が損壊されてしまった
そうです。
生きてる人間より所蔵品のほうが大事とは思いませんが、
人類の辿ってきた道を示す貴重な遺産を、
目に見えるものであれ見えないものであれ、壊し、
棄てるということは、道しるべ(地図)や電灯を持たないで
闇夜を歩くことと同じことです。
幸い、犯人の男たち9人はデモ隊の人々に取り押さえられ、
法の裁きを受けるようで、
その点ではエジプトの人々の良識はまだまだ生きてるようですが、
これ以上、悲しむべきことが起こらないことを
切に願いたいと思います。
話がそれてしまいましたが、とにかく、
OCT/PASSの演劇、面白いです。
2/25~26には大阪の精華演劇祭でも上演されるそうなので、
関西方面の方、ぜひぜひ観に行ってみてください