えんじゅです。
仕事帰りに書店に寄ってブラブラしていたら、
西条八十の詩集が置いてあったので、
なんとなく立ち読んでました。

西條八十詩集 (ハルキ文庫)/西條 八十

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『カナリヤ』などの童謡で知られる西条八十ですが、
ほかにも数多くの童謡の詩を書いてます。
その中に、『菓子と娘』という曲があって、
「お菓子の好きなパリ娘」たちの様子を描いた、
実に童謡らしい童謡なのですが、
僕の好きなCoccoさんがアルバム『きらきら』の中で
これをカヴァーしてます。

きらきら/Cocco

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Coccoさんがこの曲をカヴァーしたのには
理由がありました。

2006年に公開され、現在でも全国各地で自主上映されている
『ひめゆり』というドキュメンタリー映画があります。

http://www.himeyuri.info/index.html

監督の柴田昌平さんが、実に13年をかけて行った
沖縄ひめゆり学徒隊の生存者へのインタビューを軸に
ひめゆり学徒隊の悲劇の全貌を記録した作品で、
Coccoさんは公開当初から自身のライヴや、
当時毎日新聞紙上で持っていたコラム『想い事。』などで
この映画を紹介していました。

想い事。/Cocco

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そしてこの映画のハイライトのひとつに、
『お菓子と娘』が関わってるのです。

もともと「ひめゆり部隊」は、
「ひめゆり学園」の在校生から志願・編成された部隊です。
「ひめゆり学園」は
沖縄師範学校女子部と沖縄県立第一高等女学校の通称で、
言ってみれば教師の卵たちが看護・衛生要員として
前線に動員されたものでした。

「ひめゆり学園」からは生徒だけでなく、教師も動員され、
まだ戦闘がそれほど激しくなかったころ、
戦闘に備えて作っていた壕の中でホームシックに襲われる生徒たちを
慰めるために、ある女性教師がみんなで歌を歌うことを
提案するのですが、それが『お菓子と娘』なのです。

生存者たちの話では、そのとき、壕の中には笑い声さえ響いていた、
と言います。
映画はそれ以降、どんどん悲惨な戦場の様子へと移ってゆき、
それを語る生存者たちの表情も(当然ですが)重く、沈うつで、
語るたびに涙と罪責感が沸いてきているのが、
見ているこちらがわにも伝わってくるものになっていくのですが、
Coccoさんはそこで、どうしたら彼女たちを再び笑わせることが
できるだろうか、と考え、浮かんできたのが『お菓子と娘』を
歌うことだったそうです。

実際、アルバムに収録された曲は、小さな楽隊がお祭りで
練り歩いてるような感じのアレンジになっていて、
聞いてるこちら側にも、思わず笑みがこぼれてきます。

同時期に出された名曲『ジュゴンの見える丘』もそうですが、
この作品くらいから、Coccoさんの作品には、
「弱く、傷ついてきたもの」への慈しみと、
その裏返しとして、そうしたものを傷付け、虐げるものへの
強烈な怒りが同居してるように思えます。

ジュゴンの見える丘/Cocco

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それはやはり、直接的には辺野古の問題が影響を与えてますし、
今回の菅総理の沖縄訪問や新しく公表された防衛大綱につながる、
沖縄が戦後ずっと抱えてる(そして本来は内地も抱えるべき)
米軍基地(安全保障)の問題が根本にあるような気がします。

かなしみはいらない やさしい歌だけでいい
                『ジュゴンの見える丘』Cocco

いずれにしろ、はやくこういう世界が実現できれば、と思います。