えんじゅです。

たまには読んだ本の話もしましょうか(笑)

高橋源一郎さんの短編集『君が代は千代に八千代に』を

読みました。かなり前に買ってちょこちょこ読んでたのですが、

君が代は千代に八千代に (文春文庫)/高橋 源一郎
¥550
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タカハシさんの小説はこれで2冊読んだことに

なりますかね。

ちなみに1冊目は『あ・だ・る・と』という作品でしたが、

これも非常に面白い本で、タイトルもそうですが、

面白すぎて公共の場では読めない本でした(;´▽`A``


タカハシさんの本は、評論系のものも含めて、

どれも面白いと思います。

ですが、文芸評論家の斎藤美奈子さんも以前、

どこかで書いてましたが、彼の小説は論じたり、

人に紹介するとなると、途端に難しくなるのです。

言ってみれば「タカハシ・マジック」ですね。

『君が代~』は13篇の短編から成ってます。

どれも面白いですが、なかでも僕の印象に残ったのは

『ヨウコ』という作品ですかね。
これは一言で言えば、

ダッチワイフにしか恋ができなくなった男の話です。

設定だけ見れば、是枝裕和の『空気人形』ですが、

是枝監督のそれとはもちろん違います。


物語は小学校教諭のスズキがダッチワイフを買うところから

始まりますが、この導入部にしてからが、

すでにいろんな問題をはらんでいます。

最近よく言われる教師のモラル、質の低下。

あるいは母親と同居し、マザコン気味のスズキの人物造形は

「お受験」的なエリートの問題や、ひょっとしたら最近の

草食男子のような話にもつながるかもしれません。

いやむしろ、教師のサラリーマン化とでも言うべきでしょうか。


最終的に、

スズキは抜き差しならないところまで行ってしまうわけですが、

こうした問題は何もスズキに限った問題ではなく、

現代を生きるすべての人に当てはまると思います。

本書の終わり、自作解説でタカハシさん自身が書いてますが、

「いま、ここに、この日本という国に生きねばならぬ人たちについて

書くこと」、

それがこの13篇の目的であり、タカハシ文学の真髄でもあると

思います。


ともあれ、ポップで面白くて、それでいてムズカシイ、

高橋源一郎の文学は、現代に生きる人にとって、

読んで損はないものだと思います。