いわゆる”文豪”といわれる作家の小説を
ほとんどまともに読んだことがないのに気がついた。
森鴎外、芥川龍之介、樋口一葉、太宰治・・・といった
作家を読み進めているのだが、自分でも意外なほど
夏目漱石にはまっている。
漱石の魅力は
①男女の機敏や青春の葛藤というわかりやすい物語を
②読みやすい口語体で
③読み応えのある中長編を多数ものにした
ところだと思う。
特に②③が個人的には重要で
文語体でとっつきにくい鴎外や一葉、
中長編をものにできなかった芥川よりも
漱石に惹かれる所以である。
決してインテリを気取って言うのではない。
マジで漱石は現代日本文学の創始者だと思っている。
面白いことに処女作【吾輩は猫である】を読んでいると
最初のほうは台詞と地の文とがつながった
文語体に近い文体だが、後半に入ると台詞ごとに改行が入る。
今では当たり前になった文体を開発したのが漱石ではないか。
まあ文学史の専門家ではないので断言はできないが。
そんな漱石の作品で、一番おすすめの作品は
なんといっても【三四郎】である。
徹頭徹尾エピソードの羅列になる【猫】
面白いが投げっぱなしジャーマンで終わる【坊ちゃん】
主題が後半の”手紙”に集中し、ややバランスに欠ける【こころ】より
起承転結のしっかりとした構成、恋愛と青春を主軸にしながら
明治維新後の価値観の変化(と結局変わらなかったもの)を
描き切った傑作だと思う。
にもかかわらず、知名度は上記三作に劣る不遇な作品である。
映画にしたら結構いけると思うのだけど。
【猫】の読みづらさに諦めてしまった人や
【坊ちゃん】【こころ】だけ読んで満足している人にひ読んでもらいたい。
やっぱ漱石スゲエやって思うはずだから。