この物語は、むかーしむかし、「フォーチュン・クッキー」というラジオで、

クレイ役の置鮎さんがゲストに来てくださったのを記念して、

パーソナリティの中川亜紀子ちゃんといっしょにミニストーリーをラジオドラマみたいに演じていただきました。

 

その時のお話をいつもお世話になっている絵師さんたちカラーパレットにお願いして、

とっても素敵な挿絵を描いていただき、新たに物語として加筆修正しました。ジンジャーブレッドマンジンジャーブレッドマンジンジャーブレッドマン

わたしからのクリスマスプレゼントですプレゼントプレゼントプレゼント

楽しんでいただければ、とってもうれしいです。

Twitter(@mishiofukazawa)のほうで感想などお願いしますねクリスマスツリー

 

絵師さんたちベル

 

扉絵、停留所 あまなつ @URA_innosq

クレイ暖炉 セーラーさっとん @sailor_satton

クレイ ショック、窓 朝楯らん@低浮上 @r_asadate 

キットン突進 葉月リオ @riohazuki97 

 

 

 

 

 

 

 


 寒いけど、雪のないクリスマスだった。


「んで? トラップたち、結局もどってこれないの?」
 白いふわふわのセーターを着こんだクレイが暖炉の前、剣の手入れをしながら聞いた。


「そうなの。リタの話じゃ、あっちって雪で大変なんだって。

だから、馬車もなかなか出ないって。困ったわー」
 わたしはごちそうを運びながら答えた。

 

 


 そうなのよ。
 わたしとクレイ以外のみんなは、ちょっと離れた町まで出かけていって、

いろいろとクリスマスの買い物をしてたんだけどね。
 まさか、まさかの大雪で乗合馬車が出なくなっちゃったらしい。
 こっちは全く雪降る気配もないもんね。不思議ー!


 ルーミィとシロちゃん、どうしてるかなぁ。おなかすかせてないかってちょっと心配。

まぁ、ノルもいるし、大丈夫だとは思うけど……。
 

 

 

「こっちはぜんぜん降ってないのにな。あれ? すごいごちそうじゃん。どうしたの?」
 クレイは手を止め、びっくりした顔になった。
 テーブルの上には、ずらっとクリスマスディナーを並べたもんね!

 

 


「へへ。リタにもらっちゃったのよ。残りものだけどって。でも、いいでしょ。

ローストミケドリアに、タラモサラダ、マトマスープもあるし・・・・ケーキもあるんだよー」


「すごいすごい。そっちにあるの、シャンパン?」


「サイダーだよ。あーあ、ルーミィがいたらねー。喜ぶだろうに。おなかすかせてないかなぁ……」


 わたしもクレイもしばらく黙ってしまった。
 パチパチと暖炉の中で薪が爆ぜる音だけが響いて、静けさが際だった。


「…………パステル……」
 クレイがその沈黙を破った。


 ちょっと、ドキンとなった。


「ん、なに?」


 聞き返すと、彼は穏やかな笑みを浮かべて言った。


「考えてみれば、二人だけでクリスマスなんて、初めてじゃないか?」
「うん。そうね。そういわれてみれば。何だか静かすぎて拍子抜けしちゃうね。

いつも、どんちゃん騒ぎだもん」
「たしかにな。俺と二人だなんて、つまんないだろ」
「んもー、クレイってば、そんな言い方されて『そうねー、たしかにつまんないかもー』

なんて言えるわけないじゃないの! それに実際、つまんなくないもん」
「ほんと?」
 クレイの顔がパッと明るくなった。


「だって、クレイといると、なーんかほっとしちゃうんだよね」
「ええ? ほっとする?」
 って、なんだかショックを受けてる顔になった。

 

 


「うん。なんで??」
「いや、いいよ。いいけど……」
 なんだか今日のクレイ、変な感じ。


 ……と、その時、窓の外に白いものがチラチラしているのが見えた。
 わたしは大急ぎで窓に近づき、外を見た。


「ねぇ、クレイ!!」
「ん??」
「ほらほら、雪だよ、雪。こっちも降り出しちゃったんだ!」
 クレイもやってきて、暗い空を見上げた。


「ほんとだー。ホワイトクリスマスになるな、これは」
「うん。クレイ、ご飯食べたら、外に出てみない?」
「いいよ。きっときれいだろうな。そのへん、散歩でもしてみよっか。

乗合馬車がどうなってるのか聞きに行こうぜ」
 クレイはとっても優しく微笑しながら言った。

 

 


「うん、雪の町なんて、すっごくロマンチックでしょうねー。あ!! クレイ」
「ん? 今度はなんだい?」
 さらに優しく聞き返すクレイの腕をぐいとつかんで言った。


「クレイ、袖のとこ、ほら、スープにつかってたんじゃないの?」
「げ、げげ!! う、うわぁー、なんだよ、これ!!」


 そうなのだ。
 せっかくのふわふわな白いセーター、袖口のところにマトマスープの赤いシミがくっきり。

さすが、クレイだわ。


「大丈夫。すぐ洗えば落ちると思うし。脱いで脱いで」
「そっか。じゃあ、頼もうかな」
 クレイがセーターを脱いだところに、ドアが急に開いた。


「ぱぁーるぅ!! おなかぺっこぺこだおう!!」


「パステルしゃん、クレイしゃん、ただいまデシー!!」
 ルーミィとシロちゃんの元気な声。
 みんな帽子もコートも雪で白くなっちゃってる。


「わぁぁ!! 馬車、動いたの??」
「うん、動いた」
 と、ノルが入口で雪を払いながら言った。


「いやぁ、大変でした。おぉ! なんですか、ごちそうじゃないですか!」
 キットンがテーブルに突進していった。

 

 

 


 

 

 

 そして、最後にトラップ。セーターを脱いだばかりのクレイに言った。


「ったくよぉ、まいったぜ。ん?? 

クレイ、おめぇ、こんなに寒いのになんでセーター脱いでんだ??」


 

 

END

 

 

最終エピソード(上巻)絶賛発売中!

https://honto.jp/netstore/pd-book_29980128.html