台湾沖航空戦における陸軍戦闘隊の戦い
アメリカ軍が日本本土へどんどん近づいてくる1944年(昭和19年)後半。
沖縄侵攻の前に、台湾の日本軍の基地を叩いておこうと企てたアメリカ第38機動部隊の艦上戦闘機や艦上爆撃機の大群が台湾を襲います。
太平洋戦争中日本が統治していた台湾は、日本海軍にも陸軍にも重大な戦略拠点でした。
 

台湾を襲ってくるアメリカ軍機に対し、日本海軍も日本陸軍も、在台湾の航空戦力すべてを挙げて立ち向かいます。これが台湾沖航空戦。1944年(昭和19年)10月12日~16日にかけての大航空戦でした。
 

台湾沖航空戦といえば、日本の航空戦力が大損耗したけれど、アメリカの空母やら戦艦やらをたくさん沈めた大戦果を挙げたぞ!と大本営が発表するという、世紀の誤報をやらかすのですが。(大本営もはじめはこの大戦果を信じていたらしい。海軍はあれ?おかしいぞ?と途中で気づいたけれど、大戦果は間違いでしたと陸軍側に報告しなかった・・・)
台湾沖航空戦については杉浦茂峰少尉のところで書きましたが。

 

 

台湾沖航空戦で、海軍も陸軍もパイロット達は勇猛果敢に戦いましたが、なにせ数が圧倒的に違いました。敵は1000機以上で襲来するわけですから。いくら日本側のパイロットの腕がよくても、消耗戦になってしまう。

台湾沖航空戦において、日本陸軍では第八飛行師団が台湾の防空・邀撃任務につき、戦闘機隊では、陸軍飛行第10戦隊、第11戦隊、第20戦隊、そして独立飛行第23中隊、独立第104教育飛行弾、集成防空第一隊、集成防空第二隊が師団直属として戦いました。
どの隊も戦死者、未帰還者多数を出す、凄惨な結果となってしまうのですが・・・。

陸軍飛行第20戦隊の戦い
1943年(昭和18年)12月、伊丹飛行場で編制されて、大正飛行場(現在の八尾飛行場)に移動、阪神地区の防空任務に当たりました。装備機は一式戦Ⅱ型、隼です。
1944年(昭和19年)になって、千島列島を経て、6月下旬から南方戦線に移動。8月から台湾に進出して、台湾南部の小港飛行場(現在の高雄国際空港)を拠点にして防空任務についていました。そこで、台湾沖航空戦を迎えることになります。

10月12日、アメリカ艦載機120機の大編隊が屏東、高雄の空に襲来したとの報告を受け、第20戦隊に出撃命令が出ました。
しかし。この時、第20戦隊に戦隊長が不在だったのです。

10月6日付けで山本五郎中佐が転出命令を受け、後任は村岡英夫少佐となるのですが、まだ着任していなかったのです。
台湾にアメリカ機動部隊がやってくると予想されている直前に、なぜ、重要な戦闘機隊の戦隊長を交代させるのですかねえ・・・。飛行団司令部の考えていることがよくわからん・・・

鬼神のごとき戦いぶり-山縣清隆大尉
戦史叢書『沖縄・台湾・硫黄島方面陸軍航空作戦』の「臺灣沖航空戦」によりますと。第20戦隊は「戦隊長不在で、先任中隊長の指揮のもと戦った」と書いてあります。
 

この「先任中隊長」の名前が戦史叢書には書かれていなかったのですが。田形竹尾著『飛燕対グラマン』(光人社NF文庫)を読んでいて、その名前がわかりました。
山縣清隆大尉(陸軍士官学校54期)でした。
実はこの時、山縣大尉は胸を病んで重態で入院中でした。血を吐いている状態ですから、とても戦闘機に乗れる状態ではありません。
 

しかし、戦隊長不在の第20戦隊において、先任中隊長としての責任感を背負い、山縣大尉は戦隊を率いて出撃します。
軍医はもちろん大反対、隊員も必死に止めますが、山縣大尉は自分の残された命をこの空戦に燃やし尽くす決意でした。
胸部疾患なので自らの死期は近いと悟っていたのかもしれません。
 

この時、第20戦隊には隼38機がありましたが、出撃可能機は27機でした。
山縣大尉は、隊員の先頭に立ち、小港飛行場から出撃、高雄、屏東の空にあがり、幾度も機上で喀血しながら、群がるグラマンの群れと戦います。山縣大尉自らも敵機を3機撃墜し、「壮烈鬼神を哭かしむる」という戦いぶりだったと、田形竹尾氏はその著書に書いています。
山縣大尉は10月12日、13日と満身創痍で戦い続け、14日、桃園飛行場に移動して、敵機と空戦を行い、ついに自爆してしまいました。

多くの敵機を撃墜しながらも、なにせ、敵機が多すぎるので、結果として第20戦隊は多くの戦力を失い、フィリピンに移動。

そして、1945年(昭和20年)4月から沖縄戦が始まると、第20戦隊にも特攻隊の出撃が命じられるのです。
 

第20戦隊は、台湾航空戦でも、フィリピンの戦いでも、沖縄戦でも、凄烈な戦いを強いられ、多くの搭乗員が命を散らすことになってしまいました。
しかし、これは、第20戦隊だけではありません。他の陸軍飛行戦隊も、第20戦隊と同様に残酷な戦いの空を飛び続けなければならなかったのです。

 

 

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