
~前回までのあらすじ~
いつも人の集まらない慧音の学校に、たまに顔を見せる男の子がいた。
しかしその子は、最後に会ってから数日後に妖怪と関係もないただの人間同士の事件で亡くなってしまう。
歴史が何故身を助けるかを説いた日、男の子に一番近い距離にいたにも関わらず自分こそ手を取ってあげられなかった…。
残酷な事件であれ、今回は解決という道がない。 残るのはせいぜい人間の部外者による裁き…。
無力感に苛まれるだけならいっそ良かったのかもしれない。
――しかし、今夜は満月だった――。
――若くして死んだ。
「…訂正。 いつまでもずっと幸せに暮らし、おじいさんになってから笑顔で亡くなった」
――唯一の肉親に殺された。
「修正。 早くに結婚して奥さんと連れ添い、たくさんの子供、たくさんの孫に囲まれて温かく生活していた」
――あの日、慧音先生に…
「削除。 わたしは会っていない」
――死ぬ間際に、どうしても、先生に伝えたい事があった。
「……聞きたくない。 あとで消そう。 全部、歴史を創る。 幸せな歴史を…、だから許してくれ…」
「――なんであの時助けてくれなかったんですか? 僕はあなたに手を伸ばしました」
「ごめん、なさい…。 いつか消すからっ、今創るから!!」
「――便利ですね。 それ」
「違う!! この能力は、本当は、本当に、そういうものじゃない…。 許してくれ…」
――あの日、僕は、あなたに会いに行きました。
「違う……、違う……、違う。
……ずっとずっと幸せに暮らしましたとさ。 いつまでも平和に暮らしましたとさ。
お父さんになって、おじいさんになって。 大勢の家族と仲良く暮らしましたとさ。
ずっと、永遠に…」