D 第三話 | 魔法結社ふゆMA!

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お前とはまた出会えるような気がしてた…ようこそ。

このSSはフィクションです。 実在の何かをどうこう言う気はありません。
また、特定の行動を推奨することもありません。
過激な表現を嫌う方は読むのを止めるようおすすめします。
内容はいつも通りです。














「……答えろ、D2。 さっきなんでとぼけやがった!」


「ハッ! 敵の邪魔すんのは当然だろーが! 答える義理もねぇ」


「あそこでちゃんと言えばみんな助かったかもしれないんだぞ!?」


「…あ~。 もー、馬鹿はめんどくさいなぁ。 言っとくけどそれはねーよ」


「なんでだよ。 こんなわけわからん話も親身に聞いてくれてたんだぞ」


「それが限界。
 …いいか? 仮に俺も話を合わせて命乞いして、二人とも別々に保護されたとしよう。
 いつまで保護され続ければいいんだ?
 この殺し合いに時間設定はされていない。 保護が解除されたらまた危険に晒される。
 それどころか組織がゲームの遅延行為に苛立って、勝手にケリをつけにくるかもしれない。
 寝ていたとは言え、簡単に三人を拉致った組織だぞ?
 それでも明確な証拠でもあればなんとかなるかもしれないが、そのためには俺らが実際に目を合わせて死んでみるしか方法がない」


「……じゃあ、二人の脳を見てもらえばいい」


「…脳? なんで?」


「あのCって男は遺伝子からドッペルゲンガーを特定して、ドッペルゲンガーはそれぞれある程度意識を共有していると言っていた。
 では俺達のようにドッペルゲンガー同士が一都市に集中して存在している場合もあるのに、普段急に出会ったりしないのは何故か。
 俺は通常ドッペルゲンガーには安全装置が掛かっているんだと推理する。
 普段、ある地点にDがいると、他のDはなんとなくそこに行きたくなくなる、という意識を共有する。
 別に難しい事じゃない。 なんとなくでいい。
 同じエレベーターに乗ったって、全員の顔を見れるわけじゃない。
 なんとなく左を向くだけで回避できたりする。
 その信号を送受信できるとしたら、脳だろう?」


「そこまで言うんだったらお前の脳みそ調べてもらえばよかったじゃないか」


「一人で調べてもらっても意味がない。 比較して初めてわかることだ」


「比較したって、他人と違うところがどれだけあると思ってんだ。 結局、意味ねーよ」



D2と話してわかった事。
やっぱりコイツもコイツなりに推理をしている。
話の中で得る物は大きい。


そして、敵意から妨害に及んだワケではないということ。
D2は気付いていないかもしれないが、要は自分で考えた結果助からないから止めたということだ。
つまり、殺し合わなくても、助かる方法があるなら協力出来るかもしれない。


そんな方法はないが。



「脳の安全装置の話を素直に聞いてるところをみると、D2は違う考え方でもあったのかよ?」


「……あ~、そこまで言う義理はねぇな。
 お前が気付いてるかしらんが、この電話は盗聴されてる可能性もあるしよ」



電話が、盗聴されてる!?
いや、もし聞かれてたら、それを電話でバラしていいのか!?



「尾行と盗聴くらいはあると思うぜ~? このケータイは一回組織の手に渡ったワケだしな」



慌てて通りを見回してみる。
……立ち止まってこちらを監視している奴はいない。



「そりゃそうだ。 行き来しながらとか、建物の中からとか、車の中からとかだろ、ふつー。
 何しろいつ何が起こるかわからん殺し合いなんだ。 いつでも対応取れるようになってておかしくないぜ。
 それと、この手のイベントを何度も開催してるんならバレた事だってたくさんあるだろ。
 きっとバレ容認だぜ」



そう聞かされると、周囲の人間全てが怪しく見えてくる。
雲の上で日常生活してるみたいだ。 俺達の推理はどれがどこまで当たってるんだ?



「さーな。 …おしゃべりが長くなったな。 本題だ。
 とりあえず、お前は家にもうちょっと閉じこもってろ。 どーせ戦闘はある条件下でしか起こらない。
 あと、お前ドーテーか? 女の子の一人もナンパしてみろ。
 命懸け状態の今ならフェロモンガンガンに出てるかもしれねぇから、案外簡単にいくかもだぜ?
 死ぬ前にちゃんと済ませておけよ」



……生き残る為には協力してくれる可能性もあるかもしれないが、殺し合いで決着してもいいという意思表示。
プラス、自分の想定するように戦闘を進めようとする魂胆。
それと締めくくりに宣戦布告。


今回の行動は確かに浅はかだったかもしれないが、それでD2と話をすることが出来、得る物もあった。
やはり勝手に行動した方が自分に有利だ。




次、D2が俺を家に帰れと言ったのはどういう狙いか。


家の外で行動する時、ついうっかり俺と出会うのを避ける為。
となるとこれから行動してくる可能性は高い。
なら俺は言われた通り家にいた方がいい。
そして、D1を外に出るよう促してみるといい。


……まだ電話に出ない。 
くそっ、つかえない奴だ。


しかし、また少しずつわかってきた。 この殺し合いのやり方。
二人を殺そうと思えば、その二人の内どちらかと一対一の場面では必ず協力するハメになる。
今の電話が良い例だ。
どっちかが行動すると常にもう一人は邪魔しないようにする。
つまり一人の行動が全員を縛る。


……めんどくさいことこの上ない。






とっとと家に帰る。 Dが出てくる可能性のある町に長居は無用。


疲れた。
シャワー。
一杯の牛乳。







家のチャイムが鳴る。
……Dが訪ねてくることはありえないはず。 自分も死ぬからだ。
そそのかされたとして、家を訪ねるなんてことはしない。


一応、ドア越しに話してみる。



「はい? 新聞なら間に合ってます」


「あ、あのっ、助けて下さい! 私、今、殺し合いに巻き込まれているんです!」



……あれ!?!? じゃあなんでこっちに来る? ってか俺の住所どうやって?
俺が助ける!?!? 意味がわからん。
って、女? Dって姿…もとより男女関係ないんか?



「えっと、あんたがD1か? いきなりで混乱するのはわかるが、俺に会ったらあんたも死ぬだろうが?」


「あ、やっぱりあなたも! よかった! お願いします! 助けて下さい!!
 私はD5って呼ばれました。 あなたの殺し合いとは関係ありません。 だから」



…いよいよ意味不明だ。 しかし、騙されてきてるわけではない以上、危険がないということか?
声は女の子だ。 助けてくれと玄関先で叫ばれ続けるのは、近所的にもよろしくない。
もしかするとこの騒ぎで俺の敵に住所がバレる恐れもある。


……妥協案。 目を瞑ってドアを開けよう。 話を聞くだけなら問題ない。
今の段階では、このままでも中へ入れても俺が危険に晒される可能性はある。
どうせなら女の子を助けたいと思う。


……絶対に、ナンパしたくなったわけじゃない。



「落ち着いてくれ。 わかった。 今ドアを開ける…」






ドアを開けると、女の子は跳び付いてきた。


目を瞑っている俺は尻餅をついた。


女の子の腕が胴体を一周している。


豊満なおっぱいの感触が俺の胸を挟み込んでいる。
――まるで心臓をパイズリされているかのよう。


体全部が温かい。


髪から甘い匂いがする。








ありがとう、と

女の子は口付けてきた。















キスのあまりの心地よさに、俺は目を開いていた。


女の子は、綺麗な瞳をしていた。