早いものです…。


ところで、アクセス解析を見ていると、ときどき「本のタイトル」+「読書感想文」というキーワードでこのブログにたどりつく方がいらっしゃるようです。


近頃ではレポートや読書感想文をコピペするのがはやっているそうで、「ほえぇ~」と思っていました。

自由にダウンロードしてよい感想文のサンプルもあるそうですが、そんなの出して嬉しいのか?

恥ずかしいだろ?


読書感想文が書けなくて泣いてこそ夏休みじゃないですか。


悪いことは言いません。


泣いとけ。



ほかにもテレビで見たのですが、宿題代行業者があるとかで、一式十数万ぐらいで引き受けてくれるんだって。


そのときの親からの依頼メールの文章が、「塾が忙しくて自由研究ができない」とかそんなのだったのですが、だからって金払ってやってもらった、他人の作品を生徒は「ぼくのです」「私のです」って提出するわけ?


なんかこう…そんなこと子どもにさせる親って、なんか間違ってないか?

教科書で読むとピンと来ずにむずかしい理論がアラ不思議。
えげつなくも面白い(ときにホロリとする)エピソードですっと入り込めちゃいます。

とにかく小説としても面白く、ひとつひとつのエピソードは短く読みやすいので、笑いたい方にもオススメ。

それにしても、借金で首が回らなくなった人に「もっと借りて自己破産すればいいんだよ!」なんて…すごいな(笑)
(もちろんこれはフィクションで、あくまで理論の説明です。それが「良い生き方」「みんなも破産しよう」なんて書かれているわけではありませんよ、もちろん)

現実が美しく描かれすぎないところ、勧善懲悪でもないところも、クールで皮肉で実践派らしくていい感じ。

ここから興味を持って勉強してみるのも良いのでは?
私はゲーデルを読んでみたくなりました。絶対理解できないと思うけれど(笑)

あー、続きも読みたい。

2010/8/18 読了
緻密、の一言に尽きます。
犯罪グループ「レディ・ジョーカー」、企業、警察、記者、そして彼らを取り巻く様々な人間たち。政治、社会。

それぞれの立場の視点、そしてその組織が一枚岩でない複雑な構造をしていて、そのある一つの組織の中にいる個人としての視点、すべてがみっちり描かれていて、息苦しいぐらいです。

いつもあるのが、社会の中にいる一個人が抱える空虚で、その空虚といかにつきあおうとするのか、どのように捉えようとするのか、社会に対して牙を剥くのか、己を傷つけてしまうのか。
ひとりひとりの人生が、登場人物が互いに評し合うことはあっても、作家によっては肯定もされず否定もされず、生々しく描かれています。

何を悪とするかその基準はしっかりある。そういう意味では安心して読めるといえばそうかもしれません。
ただ、その悪が告発され罰せられているかというと、実際にはそんなシステムは作動していない。そんな事実が容赦なく突きつけられてきます。

犯罪を犯す人間が何らかの目的をもっているかどうかはいつも明らかなわけではないし、犯罪者を追う側の人間が常に正しく美しいわけではない。
お話の中には理不尽な苦しみを背負う個人、報われない個人、埋没する個人がいて、それは現実を的確に捉えたものだと思います。

この複雑さ。
描ききろうとする作家の執念には脱帽です。

そして、私が好きなのは、苦悩する人間に対する作家の優しさです。
この小説の中では、死というものがきちんと重みを持っているところも。

読んで心がウキウキするような本ではないですが、読む価値のある本だと思います。

それにしても男だらけなのですが、それもまた潔いですね。

2010/8/17 読了

高村 薫
新潮社
発売日:2010-03


高村 薫
新潮社
発売日:2010-03


うーんと、生々しいのですが、合田刑事と加納検事が美貌なので、そういうところでちょっとフィクションぽくなっていることもあるのか、やっぱり小説として面白いと思うのです。
また、常に緊迫していて冗長なところもない(だから疲れるといえば疲れる)。

「これだったら、ノンフィクションドキュメンタリーとして書けばいいじゃん」という感想を持つ本がときどきあるのですが、そういうのではないのです。

硬質の理路整然とした文章で、寄り添いながらも超客観的に突き放して書いているような印象で、最初は少し読みにくいかもしれませんが、ハマるとヤミつきになりますぞ。


個人的には、組織の中に埋もれ踏まれながら、「いつか自分は組織をひっくり返すようなことをしてやる」と妄想を繰り返し、そのたびに自虐に陥っていく半田刑事にはいろいろ「あああー」と思うところがありました。