少し前になるのですが、乱歩原作、丸山(美輪)明宏出演の『黒蜥蜴』(1968)を見ました。
監督:深作欣二
原作(戯曲):三島由紀夫
出演:丸山明宏、木村功、松岡きっこ……三島由紀夫
明智小五郎は、宝石商の岩瀬庄兵衛から、「エジプトの星」(すんごいダイアモンド)と娘の早苗を黒蜥蜴から守ってほしいとの依頼を受ける。
美しいものを狙っては盗みを働く女賊「黒蜥蜴」と探偵明智小五郎の対決。
オープニングは、美輪明宏の歌う『黒蜥蜴の唄』が流れる中、ビアズリーのサロメの絵がばーんと出てきて印象的。歌詞もすごかった。
私が悪趣味と紙一重の退廃的な美しさをもともと好きだということもあるでしょうが、映画全体の雰囲気はとても気に入りました。
この映画、戯曲仕立てですので、やたらと大仰です。
舞台もやたらギラギラしています。
剥製がぴくぴくしています(笑)
俳優たちの顔が濃ゆい。
そして、美輪明宏。
強烈。
そして、三島由紀夫。
剥製役(セリフなし)。
黒蜥蜴が誰かというのは映画が始まる前からわかっているわけですし、ストーリーはまあ、明智が負けるわきゃない、と思いながら見ることになります。
それでも、黒蜥蜴と明智のやり取りは面白いし、どうやって相手を出し抜くものか、それなりにスリリング。
もうあんまりよく覚えていませんが、男性から薔薇の花束をプレゼントされる女の話というのがあって、その花束に毛虫がいたときにどう反応するかで、犯罪者の素質があるかどうか、というような会話を黒蜥蜴と明智が交わす場面があります。
1.花束ごと暖炉に投げ入れる
2.毛虫を暖炉に投げ入れる
3.男を暖炉に突き飛ばして殺す
1.と2.は普通の反応ですね。
3.の女が犯罪者の素質ありなんです。
そりゃ犯罪ですわな。
とツッコむなかれ。
ここで何が重要かというと、3.の女性が常識を逸脱した行動をしてしまっているところ、のようです。
その理由は、薔薇を捨てることも毛虫を殺すこともできない優しく純粋な女だから(だったと思う)。
で、黒蜥蜴はもちろんこの3番。
いろいろ明智が説明してくれて、そのときは「なるほど」と思ったのですが、すでに記憶の彼方。
黒蜥蜴という盗賊は、彼女が「美しい」と思うものを集めまくり、なんと「美しい」と思う人を殺しては剥製にしてしまうという、えらいこっちゃの悪女なのですが、とにかく犯罪(悪)に美を追い求める姿は徹底的。
もちろん自分自身もいつも綺麗にしています。
この映画(おもに美輪明宏)を美しいと思うか思わないかは観る人それぞれでしょうけれども、美しさを求めて作ったんだというのは伝わってくると思います。
私は、美輪明宏をきれいだと思いました。
出てくるたびに装いもヘアスタイルも違っていて、すごく凝ってます。
でも、女性としてきれいかというとなんともいえず、男性としてきれいかというとそうともいえず、なんというか性別を超越していました。
男でも女でもない不安定な揺らぎが、既存の美醜の感覚を微妙にはみ出ていました。
はみ出るというのか、深まるというのか。
派手さ、華美さ、キラキラを通り越してギラギラした感じ、だからこそ浮き上がってくる黒蜥蜴の孤独と「純粋さ」。
なかなか面白い映画だったと思います。
アップが多くてちょっと疲れるけどね(笑)。
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↑こちらは三島由紀夫の戯曲。