陸の孤島 飛騨 「地球を半周しても見にきた価値があった。」 | あざみの効用

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或いは共生新党残党が棲まう地

「トンネルの利用者が150人しかいなくても、その人たちに欠かせないものならば、億単位の金をつぎ込み、トンネルをつけるのが政治だ。橋を架けるのも同様だ。都会ではトンネル1本、橋1本が地域住民の生活の明暗を左右するようなことはない。橋1本の重みが、都会と(新潟)三区ではまったく違うのだということを、君たちは考えたことがあるか」現在とは違う、社会福祉の行き届かなかった貧しい時代である。


                      津本陽「異形の将軍 田中角栄の生涯」



ブログタイトルの言葉は、明治期に来た建築家チャールズ・ムーアが吉島家住宅を見てなした言葉です。先月、飛騨 に行って参りました。世界遺産、下呂温泉も駆け足で見て回ったので飛騨は一通り(帰雲城 跡地(?)は行けませんでした。街のガイドさんやバスのガイドさんの談によると、金沢大学が研究しているとか、麓の工場には出るとかその程度の話しか聞けませんでした)巡らせていただきました。


空港がないので、陸路でしか飛騨には行けませんが列車だと富山経由もしくは名古屋経由になってしまうので、あまり時間に大差ないのでバスを選択。今どき、国内移動に5時間近くかかるなんてまさしく陸の孤島ではないかと、そう3月にもかかわらず大雪が途中から降り出す険しい山道でぼんやりと思いながら向かったのですが、辿り着いて各地を巡るうちにそれは決してネガティブな意味ではないと訂正を迫られました。


周りを日本アルプスに囲まれてはいるが、鉱山(埋蔵金伝説は江戸時代以前の話で、江戸期以降は基本は鉛です。有名なのが現在スーパーカミオカンデがある神岡鉱山、こちらはイタイイタイ病の発生源としても有名)に、現在のと木材という資源に恵まれ江戸時代には郡代(3箇所しかないうちの1つ)が置かれたことからも(金沢と名古屋に睨みが利かせられる地としても)栄えていたようです。現在の観光都市への転換に関しては1972年にいち早く「市街地景観保存条例」を定めたことが大きかったようです。都市の景観、保護というものを考えないとどうなるかは、それこそ地方都市の惨状を一瞥すれば分かることです。もちろん、工業誘致、資源地、その他公共施設(原発、産廃、基地、、、)に成功すればまだしも、交通の便、抱えている人口、大都市までの距離などを鑑みて早期に観光都市への選択に舵を切れたことが今日の成功に繋がった。つまり、自ら孤島と化す決意を地域として持てたということです。


そして保存するというのがいかに普段の努力、労力を注ぎ込む必要があるか、それは合掌造りを維持するための”結”が象徴ですが、それは散落地に限らず、都市でも同じ。三大山車祭りの一つ高山祭では各街の”旦那”(これがキーワード!)が山車を作り、維持し、そして古い町並みを補修、清掃を毎日続ける必要があります。意識して街を歩くと各住戸の前に表札の横に~係という表札を掲げる住宅の余りの多さに気付くはずです。


そして保存だけでなく観光都市として生き残るためには、保存すると同時に整備(外国人対応や旅館、土産、食、ガイド、街の交通などこれまで記してきたようなもの)が必要となり、その点も上記飛騨高山市の公式ホームページをリンクさせたので見ていただきたいのですが英語、中国語はおろかその他の言語まで用意する周到さ。街中も普通に英語表記され、地図が用意されていました。そして、土産ということでいうと単に伝統文化に留まらない、家具(自由が丘に支店を設けるような)や、あるいは、女性誌で取り上げられるような新しいキャラ、細工物などの店舗と、古い町並みの中にも新しい血を感じさせる店が構えていたりと、歩いているだけで楽しい。


そして温泉、飛騨牛、朴葉味噌などの食(切干大根を朝市で買ったのですが、、、その美味しいのは良いのですが便が良くなりすぎるのが玉に瑕w)、歴史文化施設と満点でした。ジビエはもちろんのこと、魚介類も富山経由で新鮮なものが入るらしく美味でございました。


そして上に旦那(大商人・豪農)がキーワードと書きましたが、為政者がリードしていると言うより旦那衆がリードして飛騨高山はあるようです(吉島家で拝見した資料によると)。外においては商売して儲けた金をただ溜めこむのではなく山車にしても、あるいは上記屋敷も不況下においてであったように、街に金を落とすことを厭わない気風を持っていたそうです。だからこそ、慈善活動にしてもまずは旦那衆が金を出さなければ庶民も出さないといったこともあったと。自治にしても外からくる為政者に対して最初に接待漬けにしてそのうち借金塗れにして頭が上がらなくさせてしまうなどといったことも行う、それでもな場合には大規模な一揆 を起こしてまで追い出すなど荒事も厭わないときてます。


そしてその気風が未だに残っているであろうことを、都市景観条例の背景にみました。もちろん商圏の大きさと交通の便の見合いなどもあるでしょうが、見事に大手量販店、チェーン店をほとんど中心部に見ず(郊外でK's電器は見ましたが)。普通に商店街も生きてますし、なによりしょっちゅうガスボンベやプロパンガスを積載して走っているのを目にして覚えた高山米穀店 のような米屋や酒屋といった昔からの大店が街のあちこちに点在しているのを見ました。


都市、地方がいかにあるかについて時間的に長軸でしかも公の精神で考えられる人間がどれほどいるかは切実な問題です。


あと純粋に雪国の生活の知恵として榑板(クレイタと読むらしい) に感心。合掌造りの中でも考えたのですが、あれだけ寒ければ否が応にも囲炉裏の周りで家族団らんせざるを得ないだろうと。


富山と岐阜飛騨の観光業者が「観光圏」申請 年330万人目指す
>観光庁が「観光圏」と認定すれば、観光マップの作成や連泊プランの商品化などの整備事業に国から補助金が出る。申請では、富山県側は高岡市など6市、岐阜県側は高山市、飛騨市、白川村の2市1村を一つの観光圏とする。山あいにある奥飛騨温泉(高山市)や、海越しに立山連峰が見渡せる雨晴海岸(高岡市)などがあり、山と海の両方の観光資源に恵まれている。この地域の年平均の宿泊者は延べ約300万人で、協議会は平成26年度までの5年間で330万人に増やすことを目指している。(MSN産経 2010.2.23 20:43)


飛騨高山にバスターミナルを設け、連日のツアーで白川郷や奥飛騨温泉郷などを結びつけ地域としての観光力を高めようとしていたこともまた花丸でした。若干、下呂温泉は歴史があればこそ致し方ないのかも知れないけれど、温泉巡りした旅館はどこも若干外装が古びているように感じたぐらい。


24 名前:名刺は切らしておりまして[] 投稿日:2010/03/05(金) 12:20:55 ID:cdm6m83u
確かに飛騨は日本でも有数の観光地だが如何せんアクセスが悪い。
いまでこそ高速で高山まで来れるようになったがそれも東海地区、信越がやっとだろ。

高山、古川、白川郷、郡上八幡、北アルプス、奥飛騨温泉郷、上高地、乗鞍スカイライン、下呂・・・とまー
これだけあるのは素晴らしいが活かしきれてないな。

ちなみに高山方面の飛騨地方(奥美濃省く)では富山方面から新鮮な魚が入ってくるので以外と魚も旨い。

それに比べ観光も目玉スポットもない美濃地方、岐阜市近辺なんて終わってる。
好対照すぎる。


そのトンネル開通にあたっては難路であったこともあり崩落など非常に苦労したとバスガイドさんが語ってましたが、その甲斐あって観光客は増えましたと。


26 名前:名刺は切らしておりまして[sage] 投稿日:2010/03/05(金) 12:29:32 ID:5mXEOHCP
美濃地方か・・・

とりあえずは金華山、長良川の鵜飼、日本ライン、ひるがの高原、大正村と昭和村、馬籠・・・

まあ、飛騨とくべるとかなり地味ではあるな。


32 名前:名刺は切らしておりまして[] 投稿日:2010/03/06(土) 10:42:29 ID:WQfnbb3T
>>26
関市の刃物・美濃市の和紙&円空&美濃焼。郡上市の郡上踊り&食品サンプル
関ケ原町の関ヶ原の合戦関係の史跡 等々

意外と美濃地方にも観光になりそうなネタはあるよ


ただ、飛騨ほどそれらの各観光地間の距離がどうかというところでしょう。


日本経団連が観光立国へ人材育成を提言、観光系学部は急増も就職につながらず
(1) 地域の観光振興策を立案・実施する人材の育成
①地域の専門家を育てる教育の拡充②自治体等によるインターンシップの拡充③観光専門職(仮称)の創設④地域における人材交流⑤人材バンクの創設⑥通訳案内士制度の改善⑦在外公館等の活用


(2) 観光業に携わる人材の育成
⑧企業の経営・実務人材を育てる教育の拡充⑨観光学部・学科と業界の協力⑩企業インターンシップの拡充⑪企業におけるOJT、Off-JTの充実⑫アジア人留学生の活用


>観光系学部・学科を設置している大学は近年急増し、定員数は、1992年度の240人(2学部3学科)から、2009年4月現在では4402人(39学部43学科)へと約20倍に拡大しているが、その卒業生の進路を見ると、観光関係分野(旅行業、宿泊業、航空業、旅客鉄道、観光施設、観光関連公益法人、地方自治体)への就職は約23%にとどまっている。(2010年02月23日07時00分 / 提供:日本人材ニュースHRN)


毎年それほどの新卒を受け入れられるほどのキャパはない罠。しかも観光学部で果たしてどのような専門知識を伝達出来ているのかが見えない。専門校ならば挨拶や礼儀作法など想像もつきますが。


10 名前:名刺は切らしておりまして[sage] 投稿日:2010/02/24(水) 00:13:18 ID:Mm6Cn7vI
経団連っていつも受け皿が無いのに学生増やせって言うよね
弁護士、会計士しかり、観光学部しかり


責任とらず言いたい放題ですな。


41 名前:名刺は切らしておりまして[sage] 投稿日:2010/02/26(金) 21:38:55 ID:PmQuHCI5
ガイドをやるには、外国語がかなり重要。
だから観光系学部より結局外国語関連の方が近道。


正解っぽい。


65 名前:名刺は切らしておりまして[] 投稿日:2010/03/01(月) 00:07:54 ID:2bn7BGuR
観光立国目指すんならスイス並みにマジメにやらなけりゃ駄目だ。スイスはあれだけの観光資源がありながら、国民に窓に花を飾ることをほとんど強制してたり、建築をシャレーで統一してたり、涙ぐましいほどの努力。個人の庭なのに手入れをおろそかにしていると、自治体から指導が入る。日本で同じことができるか?
そもそも町並みが汚すぎる。ろくな観光資源もないくせに観光立国なんて無理。
夕張みたく無駄金を消費して終わるのが目に見えてる。
一体日本のどこに地球の反対側からでも見にきたくなるようなもんがあるんだ。


飛騨高山を成功例として自信をもってあげさせていただきます!!!


訪日旅行客が3カ月連続増 最多は韓国、8割アップ
>独立行政法人国際観光振興機構は25日、日本を1月に訪れた外国人旅行者は前年同月に比べ10・3%増の64万500人との推計値を発表した。増加は昨年11月以降、3カ月連続。
訪日客数が最多の韓国からが23万2千人で、前年同月比78・8%の大幅増。同機構は「大型連休となる旧正月が今年は2月にずれ込んだ反動で1月は縮小するところだが、(韓国からの)訪日旅行の回復局面が下支えした」とみている。韓国では、秋田県の田沢湖や男鹿半島などを舞台としたテレビドラマがヒットし、ロケ地を巡る団体ツアーが人気を呼んでいる。


冬ソナの逆バージョンですね。聖地巡礼と称してアニメやゲームとの連動が言われるようになって久しいですがワールドワイドに仕掛けられるといいですな(ちなみにひぐらしのご当地という気配を感じ取ることはできませなんだ)。


>また、1月に海外に出掛けた日本人は、円高の影響などから前年同月比8・9%増の127万7千人で、6カ月連続で前年より拡大した。(2010/02/25 20:15 【共同通信】)


差し引きその差は2倍というところですか(もちろん一人頭で落としている金額が違うでしょうが)。


群馬県内各地で中心街のからスーパー撤退相次ぐ--今年3店舗が閉店へ"買い物難民"増える懸念
>県内各地で中心市街地からスーパーが撤退する動きが相次いでいる。今年に入り、すでに1店舗が閉店し、2店舗が閉店する方向となった。郊外の大型商業施設に客足を奪われ苦戦していたところに、買い物客の節約志向の強まりが追い打ちを
かけた格好だ。交通の便がよい中心地のスーパーは、高齢者の利用が多い。高齢化が進む中で新たな出店がなければ、「買い物難民」が増える懸念がある。


今さらなニュースではありますが、上記飛騨の成功例を再度賞味いただければと思います。雪国と言う不便さと、高齢者と言う不便さを重ねて考えていただければと。


>閉店後のテナント誘致が課題だが、郊外に向かう人の流れを戻すのは難しい。インターネット通販の普及も、街からにぎわいを奪っている。前橋市が5月の原則第3日曜に行っている通行量調査によると、同市千代田町のスズラン別館前の人通りは、09年調査では1613人で08年調査より1168人も減った。1975年調査(2万
3660人)のわずか7%弱の水準
だ。


どうやって商売を維持しろと言うのかという数字ですな。それこそそれらの店舗もネット通販に乗り出すしかありません。


>先手を打って誘致に乗り出す自治体も出てきた。板倉町は今月から、東武線板倉東洋大前駅周辺に進出するショッピングセンターに、固定資産税相当額を5年間交付するなどの優遇措置の導入に踏み切った。行政による支援は即効性が期待できる反面、補助金や優遇措置が切れる前に軌道に乗らないと、メリットが薄れた時点で企業側が撤退を検討する可能性もある。高崎市の商店街で「たかさき昼市」に取り組む久宗周二・高崎経済大准教授は、「スーパーだけに頼ると、経営戦略に街が左右される危うさがつきまとう。個々の商店が、安心できる地元産の野菜など魅力的な商品を売り、街ぐるみで活気を取り戻す努力が必要ではないか」と指摘している。(読売新聞 3.4)


最後の結論についていまさら言葉を重ねる必要はないでしょう。ただ、行政としてやれることがないかといえば時すでに遅しではありますがそうではないことも飛騨高山の例から見てとることができます(万能薬ではないとしても)。



2009-04-01 は宗教ものですが、宗教の真髄を楽しみながら学びたいと言うのならば私は迷うことなく京極堂シリーズ(それも「鉄鼠の檻」まででイイです)を推します。


2009-04-02 はカード社会を迎えるにあたって、企業リスクを鑑みキャッシングから撤退し「うる」カード会社たち。



「公営住宅法」にしてもしかり、そのころは戦災者を対象とする以外に、国のカネを住宅建設に使うことは、憲法上疑義があるとまでいわれていた。しかるに田中は、

「国民全体が戦災者じゃあないか」といって、押し切ってしまった。つまり、田中は法律の読み替えの名人だと記事は評している。”法律は人間が生活の便宜のために使いこなすもの。縛られてばかりいるのが能じゃあない”というわけだ。


                       津本陽「異形の将軍 田中角栄の生涯」


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▲決して今田中角栄が欲しいと言う無いものねだりなことは言いません。発展途上国における開発独裁に近い存在であったとこれらの本を読むことでも感じられるはずですが、自民党が解体しようとしている今、何代目かのぼん(それも低学歴だったりとか最低過ぎる)ではない、叩き上げの実力者が必要であることは確かです。