不道徳教育としての貸金業について | あざみの効用

あざみの効用

或いは共生新党残党が棲まう地

社説:グレーゾーン金利 このまま放置はできない
>最高裁判所が先月、貸金を巡る訴訟でグレーゾーン(灰色)金利といわれる分の利息の取り立ては、任意性が疑わしい場合無効とする判決を相次いで下した。出資法の上限金利、年29・2%と利息制限法の同15~20%の間の利息返済は、貸金業規制法43条で消費者金融などの利用者が任意に支払いに同意していれば有効とされている。みなし弁済規定だ。

みなし弁済が認められる要件の一つである任意性(消費者が自主的に弁済を続けること)はこれまで実は取り立て規制という面にまで目が向けられてあまり注視されてこなかったように思う。実は知識さえあれば消費者は圧倒的強者になっている。

>金利の二重基準とは何かが十分理解されていないことが、消費者被害の増幅も招いている。ヤミ金対策法が動き出して以降、自己破産手続き開始申請は減少している。違法な金利による消費者被害にはある程度の効果があっただろうが、個人民事再生手続き申請は減っていない。取り立てをめぐるトラブルや係争も高水準だ。

これは不況下での不良債権の増加に慌てた消費者金融側の融資抑制(審査の厳格化)の方が大きいと思われる(大手四社の貸出残高の減少を見れば一目瞭然)。そして破産よりも民事再生の方が債権者にとっても債務者にとってもメリットが多いので単純な債務整理とあわせて選択は変わったということでしょう。これから弁護士の増加、また司法書士にも門戸を開放したことにより、減少といってもせいぜい横ばい程度で現在の水準を維持し続けることと予想されます(よほど景気が回復しないかぎりね)。

>最大の論点は灰色金利である。出資法の上限金利は罰則を伴っており、それを上回る金利での貸し出しは処罰の対象になる。それに対して、利息制限法は民事規定であり処罰規定はない。消費者金融会社やクレジット、信販会社などは出資法に基づき貸し出しや販売金融を営んでいる。銀行などは利息制限法の上限金利の範囲内で融資を行っている。

>外資系消費者金融会社などは金利規制撤廃を求めているが、海外でも多くの国で何らかの規制があることを考慮すれば、必要と判断していいだろう。
現状では、金利規制の併存は、資金調達の違いなどからある程度認めざるを得ない。その場合も灰色金利の幅を狭めることや、金利情勢の変動を反映できる規制は考えられるだろう。ゼロ金利や量的緩和下でなぜ30%近い金利なのか、消費者の納得はなかなか得られていないからだ。

>上限金利を引き下げれば、融資審査の厳格化で、信用力の低い層は融資を受けられなくなるとの反論もある。しかし、生活資金を金利の高い融資で賄うことはもともと望ましくない。生活苦などは社会扶助などで対応すべきものだ。灰色金利の扱いが定まれば、みなし弁済規定見直しの方向も明確になる。任意性を高める措置をより明確にすることだ。こうしたことは、消費者金融業界の近代化、合理化を進め、貸出金利の引き下げも促すことになる。

おそらく、一律の金利の引き下げよりも利息制限法で元本に応じて最高利率を定めているものをよりコマめに細分化することで統合していくというのが現実的施策だと思います。10万以下ならば年利30%を超えたとしてもせいぜい月2~3000円の利息ですし。無担保・無保証を維持しつつ迅速な審査での融資を可能にするサービスは、高金利であろうとも資本主義社会において維持することはたとえ倫理・道徳に反する(嫌ならばヤーウェにでも祈って天から降らしてください)としても必要悪ですから。

※8月12日追記。
※9月16日追記。

話は脱線しますが、消費者教育も結構ですが 「不道徳教育」ブロック.W (著), 橘 玲 (翻訳) に著わされているように単なる個人的好悪の感情を超えて経済というものは動いているということを教育するほうがよほど経済観念は身につくと思います。嫌なものを根絶せんと規制した結果、実際的な害悪が顕在化、拡大する(否している)という現実から目を逸らさないことの必要性は社会というものを考察するに当たって必須の視点でしょう。この書物のメインは麻薬売買、売春ですが廃止、規制したときにどうなるかという本書の指摘は巷に溢れる批判の幼稚さを嘲笑うためにも必読。また、リバタリアンと功利主義者、リバタリアンとコミュリタリアン、リバタリアンとリベラリストの差を「自由」の優先順位によって簡明に整理した冒頭は頭の整理に最適です。

アイフルCM中止要請
>同対策会議は、サラ金業者はほぼ例外なくこの特約を設けているため「超過利息を取得できるサラ金業者は皆無になった」と指摘。CMで違法な利息を表示しつづけていることは「視聴者に重大な誤解を与える違法・不当な表示だ」として、CMの中止と、中止しない場合でも超過利息は支払う義務がないことを明示するよう求めました。

>同対策会議はまた、超過利息を認めない最高裁判決を報道したかなどについて、各局に公開質問しました。

現リプロ、SFCGの違法取立ての際にも問題になった(そしてそれがきっかけで最高金利、利息制限法は大幅に改訂された)ことです。今回も新聞では取り上げていましたが、テレビではあまり詳細な報道はなされていなかったと思います。ちなみに民商や消費者団体を組織してこれまで貸金業者と積極的に戦ってきたのは共産党であったという事実も知っておくべきことでしょう。

【関連】(ググッテ拾ったのでもっと書いているかも)
http://newmoon1.bblog.jp/entry/193479/
http://newmoon1.bblog.jp/entry/204865/
http://newmoon1.bblog.jp/entry/209805/
http://newmoon1.bblog.jp/entry/211950/
http://newmoon1.bblog.jp/entry/230212/
http://newmoon1.bblog.jp/entry/265214/
http://newmoon1.bblog.jp/entry/272049/

【ちょっぴり毛並みの違うもの】(集団愚考)
http://newmoon1.bblog.jp/entry/82558/
http://newmoon1.bblog.jp/entry/88196/
http://newmoon1.bblog.jp/entry/148387/
http://newmoon1.bblog.jp/entry/160917/

※4月28日、非常に洗練された資料として↓リンク追加。
bewaadさま「グレーゾーン金利に関する見方について・前編:マスメディアの取り上げ方」

俗情に媚びずまさに経済拡大第一の目線で捉えられています。


※8月12日追記ここから↓

今日の日記のところで書こうかとも思いましたが、微妙に違う気がしたのでこちらに追記します。

「武富士」元会長・武井保雄氏が死去
>消費者金融大手「武富士」を創業した元会長の武井保雄(たけい・やすお)氏が10日、肝不全のため死去していたことが分かった。武富士広報部が11日、明らかにした。76歳だった。

>武井氏は1968年に武富士の前身「武富士商事」を設立。「3倍遊ぶために3倍働け」を合言葉に事業を急拡大させ、消費者金融業界トップに育てた。96年に融資残高1兆円を達成し、98年には東証1部に上場。武井氏自身も財を築き、93年分の高額納税者番付では全国1位になった。しかし、自分の写真を社内に飾って社員に敬礼させるワンマン経営者ぶりや、利息制限法の上限金利を上回る高金利での貸し付けなど、経営手法には批判もあった。2003年12月には、同社に批判的な雑誌記事を書いたジャーナリストの電話を盗聴したとして、電気通信事業法違反(通信の秘密の侵害)で逮捕され、04年11月に東京地裁で同法違反と名誉棄損の罪で懲役3年、執行猶予4年の有罪判決を受けて、確定した。

>武井氏は、逮捕直後に会長を辞任したが、今年3月に米経済誌「フォーブス」が発表した世界長者番付では、日本人トップの107位(資産総額54億ドル、一族含む)にランクされた。(2006年8月11日13時41分 読売新聞)

いろいろと記したいこともあるのだけれど、ありすぎて逆に混乱してしまっています。もし、興味がある人がいるならば(そもそもこんなところにこっそり追記している記事に気付く人がいるかどうかも微妙ですが)高杉良「欲望産業」をお勧めしておきます。

先週、関係者から連絡が来ていたのですが(シカトしました!)、おそらくこのことだったのでしょうね…。これで莫大な相続金対策で株が売られるとかそういう可能性は皆無です。誤解があるみたいですけれど武井氏の資産はもうほとんど生前に贈与されています、フォーブスなどの番付も武井氏個人の資産ではなく一族となっていたはずです。そしてその生前贈与分に関しては既に国税庁と死闘を繰り広げていることも関連記事をメモしたとおり。

既に内情は知らないので推測するのみですが、金融庁対策で信託に手放した持ち株を配当を増やすなどして折を見て取り戻そうとしているのだろうなと見ていましたがその狙いは潰れたでしょうね。この3~4年をあたら無駄に浪費したつけはもはや挽回不可能でしょう。環境の激変でもってもはや縮小均衡を図れる地点を早急に探らないといけないでしょうが、それも無理でしょうね。おそらくぐだぐだと創業者精神を受け継ぐなどと称して自ら傷口を広げていく姿が目に浮かびます。

<武富士>武井容疑者「右翼、暴力団、警察使え」と処理法指示(毎日新聞)
>武井会長は中川容疑者らに「よく覚えておけ。右翼は暴力団に弱い。暴力団は警察に弱い。警察は右翼に弱い。この三つをうまく使って物事を収めるのがお前たちの仕事だ」と、口ぐせのように言っていたという。

・・・・・・。おそらく、時代の変化を読めなかったのでしょうね。裏工作でもって物事を総て隠蔽処理出来る時代は終わって、むしろその場当たり的な対応が傷口を広げて致命傷にすらしかねない時代になっていたと。

檄の風景 とかもう懐かしすぎて乾いた笑いしか出てきません。

本部長「回収、いくらだ?」
男性 「いや、回収、3020万でございます」
本部長「約は?」
男性 「約は、残り838でございます」
本部長「全く駄目じゃん」
男性 「いや、申し訳ございません」
本部長「全く」
男性 「いや、申し訳ございません」
本部長「なー!!」
男性 「いや、あの、本当、申し訳ございません」
本部長「何やってんだ、お前?」
男性 「いや、回収いたします」
本部長「なー!!」
男性 「いや、本当、申し訳ありません。」
本部長「よー!!」
男性 「いや、本部長、申し訳ございません、回収します」
本部長「…さっき2000万だの、ほざいてるんだろ、てめえら!!」

※約というのは、毎月、10日前後の管理締め日に30日以上の延滞状態にある債権の回収約束のことです。

ホットストック:武富士が上伸、創業者死去が報じられた後に買い優勢
>共同通信で、創業者で前会長の武井保雄氏の死去が報じられた後に買い優勢になった。市場では「武井氏の死去により、先行き強引な経営手法が行われる可能性がなくなったとの見方が出て、買いを誘ったようだ」(準大手証券情報担当者)との声が出ていた。

棺覆いて事定まるではないですけれど、その死を好材料と判断されてしまう、その幾重にも皮肉な現実に虚しさしか覚えません。哀悼ではなしに哀れみの情を覚えています。

参考;一報後の後場に上離れしたチャート

563 名前:名無しさん@6周年 投稿日:2006/08/11(金) 13:52:11 ID:fMcS30Xr0
なんで株が大幅高なんだ?

566 名前:名無しさん@6周年 投稿日:2006/08/11(金) 13:52:56 ID:0TJ4HRFb0
>>563
日経CNBCいわく 当面の悪材料がなくなったからだそうだ

600 名前:名無しさん@6周年 投稿日:2006/08/11(金) 13:56:54 ID:L3DXgBry0
なんというか・・・純粋に金が絡む世界ってのは正直なものだな
武富士の商売と同じだ

最後のコメントに深く、深く同意いたします合掌。

※ここから9月16日追記分

消費者金融:借り手の保険金…半数以上が「死因不明」
>金融庁などによると、消費者金融大手5社が05年度に生命保険の支払いを受けた3万9880件の中で、遺族に請求して入手した死亡診断書や死体検案書で死因や死亡状況が判明しているのは1万9025件。うち自殺は3649件を占める。一方、全体の5割超の2万855件は死因が不明だった。死因の判明した件数のうち自殺の割合は19.2%に達することになる。

>この生命保険は「消費者信用団体生命保険」(団信)と呼ばれ、借り手を被保険者として消費者金融が掛け金を支払い、死亡時に残った債権を保険で回収する。一般の生命保険の場合、保険会社は死亡確認のため、遺族に死亡診断書などの提出を求める厳格な運用をしている。

>しかし、団信では契約後1~2年以上たったり、債権額が少ないケースでは業者が市町村役場に請求した住民票で死亡の事実を確認するだけで保険を請求できる。一部の大手消費者金融は毎日新聞のこれまでの取材に「遺族に負担をかけないための保険であり、死亡診断書などで遺族から死亡確認するのが原則」と答えていた。(毎日新聞 2006年9月14日 3時00分)


消費者金融のコメントの通りでしょう、こんなの。銀行や商工ファンドならともかく100万にもみたないような額を回収するために自殺を促すというようなことはないですよ。自殺がたとえ借金苦によるものだとしてもおそらく債権の大部分は銀行が占めていると考えるのが普通ではないの?こんなのを否定したら事業系の保険なんて全部否定しなければいけなくなるのでは?


Comments
Sanzo-さんコメントありがとうございます!「不道徳教育」ですが冒頭の整理こそ一番の見所だと思います。後の実例(訳するに当たって時代遅れな例を外すなどの手を加えているそうですが)は、一つ読むと全部同じパターンの繰り返しですからね(笑)。また実際自分はリバタリアンではないので、正直ついていけない部分もあるし(いくら思考実験では~になるはずと結論でても、そうならないのが世の常というのは株式売買をしていれば…orz)。
commented by 遊鬱◆jnhN514s
posted at 2006/03/07 21:40
こんばんは。
不道徳教育現在読書中です。古い場所からすいません。確かに、冒頭の数ページに重要な事が書かれていますね。訳文のほうはまだ読んでません(笑)。
commented by Sanzo-
posted at 2006/03/07 21:12