江戸には色々な芸人たちが往来していた。
特に正月ともなろうと、獅子舞や万歳、鳥追いにと各家々の門前で芸能を振る舞い祝儀を得る芸人で賑やかであっただろうと想像される。
門付芸人というのは、個々の家の門前で芸能を演ずることにより祝儀を得て生活をしている芸人たちである。
長唄にも、多くの門付芸人が登場する。
猿回し・傀儡師・獅子舞に、願人坊主などなど。そして、今度、お囃子の締め太鼓をお稽古する『春駒』というのもそのお仲間である。
春駒というのは、正月に各家々の門口や座敷で、春駒と呼ばれる張り子などで馬の頭の形をつくりつけた竹に跨り、三味線や太鼓に合わせて養蚕の予祝の祝言を唄って踊る芸能である。
「めでたやめでたや、春の始めの春駒なんどは夢に見てさえよいとや申す」という唄いだしで必ず始まる。春駒の起源は平安時代宮中の正月七日に行われた「白馬会(あおうまのせちえ)」という行事にあるとされている。
白馬は陰陽でいうと“陽”のものとされ、もろもろの邪気を払い、青陽の春を迎える呪術としてはじめられたものなのだそうだ。
正月七日は人日の節句である。五節句の最初の節句である。お正月最後の日でもあり、この日は一年の無病息災を祈り七草粥を食べる行事がある。
春を迎えるにあたり、邪気を払い自ら健康を祈るという日だったのでしょうね。
さて、『娘七種』も若菜摘を題材にした曽我狂言であるが、この『春駒』も曽我狂言の一つである。本名題を『対面花春駒』という。春駒に身をやつした曽我五郎が、仇の工藤家に入り込むという物語。
まあ、思えば工藤さん宅。色々変身した五郎君や十郎君がやってきて、「またお前らか!」てな感じですね。同じような感じで、源頼光の家も土蜘蛛さんが色々変身して乗り込んでくる。何気に面白い。
作詞は増山金八。作曲は初代杵屋正次郎。寛政三年江戸中村座の正月狂言『春世界艶麗曽我』の中で舞踊曲として演ぜられた。五郎を四代目市川八百蔵、小磯の芸者おとりを三代目瀬川菊之丞、手越の芸者おてふを四代目岩井半四郎。いやいや人気女形が二人も出演。すごいですね。二人の芸者を梅と桜に例えられた内容。豪華絢爛ですね。
この主役の四代目市川八百蔵は初代藤間勘十郎の弟で四代目岩井半四郎の門弟である。
また、初代市川中車。去年話題になった俳優の香川照之氏が歌舞伎ネームとして襲名したお名前の元祖なんですね。
短くて華やかな舞台面を思わせつつも、のんびりとした雰囲気のある曲のように感じます。
楽しそう♪
でも、太鼓って・・・前半にチョロッとなんですね。