真しほ会 | fuyusunのfree time

fuyusunのfree time

長唄などの邦楽をこよなく愛する看護師のfuyusunです。
ナースの仮面を脱いだ、fuyusunの日常を綴っています。

masiho22.jpg
masiho22a.jpg   
藤舎流の長唄囃子の演奏会「真しほ会」が昨日、水天宮の日本橋公会堂(日本橋劇場)で開催されました。
例年、寒い寒い夜道を歩いて帰るという記憶が強いのですが、今年は暖か・・・。やっぱり、温暖化進んでいるんですかね。

常磐津『子宝三番叟』
珍しく、常磐津の演奏がありました。
常磐津や清元などは、踊りの演奏でしか接していないので、こういったジャンルの音楽のお囃子はたいがい御簾内なんですよね。今日は、出囃子。貴重な体験です。
常磐津の三味線の音色は、長唄と違って深みがあって良いですね。とても心地よい音色です。
浄瑠璃も、唄とは違うので分かりやすいです。
“三番叟もの”は大皮が命と、亡くなった前師匠が仰っていました。本当にそうですよね。
大皮によって、三番叟ものは曲想が大分変わるように感じます。
今日は、若手の方が大皮。若手らしく、また彼らしいパワフルな三番叟の世界が広がっていました。
しかし、常磐津ののりって難しいですね。太鼓にやや硬さを感じましたが、良い演奏だったと思います。
勉強になりました。

『花車岩井扇』
1792年、江戸河原崎座において初世岩井粂三郎(後の五世岩井半四郎)によって踊られた曲だそうです。
文献によりますと、西園寺公宗息女ゆら姫が白拍子姿で踊る、若く美しい女形の魅力が溢れるような舞踊なのだそうです。ほほう、粂三郎という方は抜群に美しい女形さんだったのですね。
どれどれ・・・と検索。
dl01.jpg
http://www.nagoyatv.com/ukiyoe/list/kabuki/ks_01.html
確かに美しい役者さんだ。

さて、藤舎流の女流の方々に加え、白一点で太鼓に若手の方が並ばれました。
いやいや、白一点というのは難しいものなのですね。けっして、変な演奏ではないのですが、何かアンバランスな違和感を感じました。性差があるのだから仕方が無いのですが、良い演奏だったので惜しい感じでした。

『小鍛冶』
三味線の師匠がご出演。
なかなか、都合が付かずにお休みを頂いたまま。復帰したいのですが、、、「師匠ごめんなさい」と、師匠の舞台姿を拝見するたびに思う。
師匠の三味線はガラスのような繊細さとクリスタルのような輝きとクリアさ。そんな音締が大好きです。
『小鍛冶』の合方のあとの“打つという・・・”という部分。つまり来序のところ。
あそこの途中に入る三味線の替手。師匠らしい美しい旋律でした。

タテ小鼓の方。楽器の不調でイライラされていましたね。確かに「もし自分だったら」と思えば、自分もそうなってしまうかもですが・・・、やはり、態度や表情に自分の苛立ちを現してしまうのっていただけない事かもと思いました。
暖かといっても、まだまだ乾燥の季節ですから、小鼓にとって厳しい季節。とってもお気の毒なんですが、、、
自分も気をつけないとと思いました。

パートごとの演奏は素晴らしいのですが、それが融合すると「???」となってしまう事ってありますよね。
素晴らしいものどうしが、互いを高める結果は良いのですが、
素晴らしさが、何かを殺してしまう結果になってしまう事がある。
全体のバランス。演奏として大切なポイントなんだなぁと思いました。

『賤機帯』風の一調
お家元の小鼓の音色は、年輪を重ねる毎に深みが増しているように思う。
私は誕生日を迎えるたびに、避けられない老化によって能力の低下を感じてブルーになる。よって、年輪を重ねる事に対してネガティブになってしまう。
しかし、お家元の小鼓を拝聴すると、年輪を重ねる事がとてもアクティブに感じる。
きっと、凡人の私がお家元の域に達することは、数百倍の研精を重ねても困難な事と思う。けれど、少しでもその域に近づけるように研精したい。

この風の一調は、四世藤舎呂船氏の作調。後半に鞨鼓の手組みを二杯入れる部分があります。その部分を。鞨鼓を一杯、二杯目を一調という形式にしたものです。
お家元の表現力の素晴らしさに改めて脱帽。素晴らしい芸を堪能。
今日、大汗をかいて、走りすぎて喘息が出そうになっちゃいましたが、その努力が報われました。
スッピンお化けになりましたが、本当にこの演奏が聴けてよかったです。

太鼓は我が師匠でした。やっぱり、師匠の太鼓は素晴らしいです。
特に、私は師匠の『賤機帯』の演奏が大好きです。このような太鼓が打てるようになりたいのですが、、、
師匠不幸の弟子が故、ぜんぜん師匠似になる事ができません。
長唄も三味線もお囃子の各パートも、一つ一つ素晴らしいのですよ。そして、融合して相乗効果。どのパートも殺しあうことなく、それどころか互いを高めている。こんな素晴らしい演奏・・・目標ですね。

『蓬莱』
中川氏の笛のファンになって、複数十年経ちますが、
相変わらず、力強さの中にクリアな繊細さが加味された、女性のハートの奥底を貫く笛の音色です。
ファンタジーな世界です。
先ほどのお家元の小鼓ではありませんが、中川氏の笛も年輪を重ねるごとにうっとり度が増す気がする。

『蓬莱』という曲は、上品で素敵な曲ですね。
四世杵屋六三郎がどなたかの新築祝いのために作曲したのだそうです。
新しいお家を桃源郷の蓬莱に例えての曲なのだそうです。いやいや、『老松』『松の緑』と目出度い曲をいっぱい作曲された六三郎氏らしい一曲ですね。

『問答入り勧進帳』
タテ三味線の稀音家祐介氏の三味線は、繊細さクリアさが売り物のイメージがありました。
けれど、お芝居方面で活躍されるようになられて、パワーが備わりましたね。
素晴らしい、三味線弾きさん。素敵です。
今日の滝流しから段切れまで、まるで世界一俊足なウサイン・ボルト並のスピードでしたね。
それなのに、誰も「私はダメなので、皆様お先に」と離脱にないのが素晴らしい。
安宅関で、招待がばれそうになった義経一行。弁慶の冷静を装った対処でなんとか逃げられましたが、
一行のバクバクな気分が、この最後の乗りで伝わります。
本当に逃げ足が速い。
『勧進帳』が大好きで、いつも自主トレしちゃうのですが、いつもこの最後で私は離脱してしまう。
私は、一行の足手まとい。離脱して、まんまと捕まってしまうタイプです。
いやいや、それにしても超人的で凄かったです。
チーターに襲われるインパラの群れという感じでした。はい・・・。

またまた、来年が楽しみ。
本当に勉強になる演奏会です。