真しほ会に行く | fuyusunのfree time

fuyusunのfree time

長唄などの邦楽をこよなく愛する看護師のfuyusunです。
ナースの仮面を脱いだ、fuyusunの日常を綴っています。

本日は、藤舎流お家元主催の演奏会が日本橋劇場にて開催されました。
毎年、様々な趣向があって楽しみの会であります。
今年も、ワクワクと劇場へと向かいました。

『櫓三番叟』
唄   杵屋利光、他
三味線 杵屋勝三郎、他
(笛)藤舎正生(小鼓)中井一夫・藤舎清鷹・藤舎成光(大皮)藤舎円秀(太鼓)藤舎清之
(一番太鼓)中村寿慶
解説書によると、この曲は1836年江戸市村座で初演されたものらしい。本名題を『花誘劇場踊(はなさそうかぶきおどり)』。歌詞の中に「櫓めでたき初芝居」というのがあって、これから『櫓三番叟』と名付けられたそうです。
作曲は杵屋勝左衛門。作詞は宝田寿助。
格調高い三番叟ものの歌詞を軸に、きちっと三番叟ものの形式をとって、その中に廓での色事が唄いこまれているという粋で華やかに仕上がっている曲。
確かに華やかで聴き応えのある曲でした。
小鼓の中井氏は大皮の名人ですよね。しかし、最近になって小鼓を打たれる事が多くなった気がします。
中井氏の大皮のファンである私。小鼓もまずまず素敵ですが、こういった曲はやはり中井氏の大皮で拝聴したかったのが正直な気持ちです。

『花の友』
唄   今藤政貴、他
三味線 杵屋栄八郎、他
(笛)藤舎理生(小鼓)藤舎呂英・藤舎花帆(大皮)藤舎朱音(太鼓)藤舎千穂
タテ小鼓以外は女性チームの出し物です。
この曲はお茶の宣伝のために作られた曲として有名です。
普段はお囃子を入れずに演奏する曲。なので、プログラムを頂いた時に「えっ!この曲にお囃子がついているんですね」と言ってしまったくらいです。
お囃子の入らないこの曲は春のような穏やかで上品な曲。色鉛筆で描かれたようなワールドが広がるんですが、
お囃子が入ると、やっぱり力強さが加わりますね。
曲想に合わせて、とても柔らかくお囃子を入れていらっしゃいましたので、とっても上品にまとまっていました。
素人だと、何でもバシバシやってしまう傾向にありますが、この曲想にあらせて色を付けられる。さすがにプロと言うものは凄いものです。勉強になりました。

『越後獅子』
唄   杵屋忠次郎、他
三味線 今藤長龍郎、他
(笛)藤舎推峰(小鼓)藤舎清鷹・藤舎成光(大皮)藤舎呂裕(太鼓)藤舎悦芳
長龍郎氏の演出がとても素敵でした。音の強弱等、曲の色の付け方がとても素晴らしいと思いました。
藤舎流の晒しの合方は、基本となっている望月流の手組をアレンジしたもので、とても手組が細かくて聴き応えのあるものです。その上、あれだけ色を付けると別物。上段とお囃子の息もピッタリ♪
拍手喝采です。
私もあんな演奏ができるようになりたいです。

『四季の山姥』
唄   西垣和彦、他
三味線 杵屋五三助、他
(笛)藤舎貴生(小鼓)藤舎華鳳・藤舎花帆(大皮)藤舎清成(太鼓)藤舎呂凰
何気に、みんなの気持ちがバラついている演奏だったように思う。本当は、岡安晃三郎氏がタテ唄だったのが休演のために急遽ワキ唄だった西垣氏がタテ唄になったようだ。だからなのかも知れない。
元三味線の師匠がタテ三味線を弾かれていた。師匠の持ち味は繊細さである。透明感があって綺麗な世界をイメージさせる三味線だ。ただ、どの人もそういう音ならよいのですが・・・何気に三者三様だったのでちょっと違和感があった。
それぞれのパーツパーツに耳を傾けると素晴らしいと思えるのだけれど、舞台上のどの人も視点がバラバラな感じ。みんな同じ方向を見ようよという感想です。演奏って難しいですね。

『助六』
唄   杵屋直吉、他
三味線 稀音家祐介、他
笛   中川義男
直吉氏の唄は本当に心を確実にゲットしてくれますね。プラス中川義男氏の笛も乙女心をわしづかみにしてくれる。
といも粋で心地よい演奏でした。
祐介氏の三味線も抜群です。歌舞伎に出勤されるようになって、よい意味で芸風が変わった感じ。
繊細な三味線に力強さが増した感じがする。

『三重霞傀儡師』
唄   今藤尚之、他
三味線 今藤美治郎、他
(笛)藤舎名生(小鼓)藤舎呂船・藤舎清之(大皮)中村寿慶(太鼓)藤舎呂雪
長唄には『傀儡師』と言う曲もあるけれど、これとは違う曲。
今藤流に伝承される稀曲だそうだ。
1803年江戸中村座の正月公演で、
『松春寿曽我(ふたばのはることぶきそが)』という春狂言の一番目大詰めで出された曲なのだそうです。
本来は富本節との掛け合い。作詞は初世桜田治助。作曲は富本の方を鳥羽屋里長、長唄は杵屋正次郎。
のちのち、富本節が廃絶となってしまい、富本の部分も長唄が演奏するようになったのだそうです。
けっこう、曽我ものの作品多いですね。正月の興業に曽我ものをやらないと祟りにあうとかで、正月といえば曽我ものが出されたそうです。(演劇学校の歴史でそう習ったのだけれど・・・本当かな?)けっこうあって当然。人気がなくてお蔵入りした作品も沢山あるのでしょうね。
ところで、後半に太鼓の手でアバレという手がでてくるのですが・・・普通の常識とは違う打ち方をしていたように思う。何か意図あっての事だと思うのだけれど・・・どうしてかな?!
今度、師匠に聞いてみよう♪

さて、この演奏会を終えると春は間近です。
今日は例年に比べ暖かな夜で良かったです。
ではおやすみなさい^^