藤舎囃子研究会 | fuyusunのfree time

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長唄などの邦楽をこよなく愛する看護師のfuyusunです。
ナースの仮面を脱いだ、fuyusunの日常を綴っています。

隔年ごとに開催される『藤舎囃子研究会』。国立小劇場に行って参りました。
とっても楽しみしていました。
藤舎流お家元主催の演奏会で出演者は超豪華メンバーです。
藤舎流でお囃子を勉強する私としては、絶対に外せない演奏会でした。

毎度のごとくレポをさせて頂きます。
私の主観的レポですので、どうぞご容赦下さいませね。

『新石橋』
唄    杵屋直吉・杵屋君三郎・松永忠二郎・今藤尚之右
三味線 今藤美治郎・今藤長龍郎・今藤政十郎・今藤龍市郎
笛    藤舎貴生
小鼓   藤舎華鳳・藤舎清鷹
大鼓   藤舎清成
太鼓   藤舎清之

“新”と付いていますが、けっこう古くて明治十一年に作曲された曲です。
獅子ものの後シテをテーマの曲だそうです。
お囃子の手組みで“乱序”というものがあります。
そうそう、前シテから後シテのつなぎの部分。大概、三味線の大薩摩があって次にお囃子が素になって乱序をやります。
この乱序というのは、お稲荷さんなどの登場で使われる“来序”というお囃子の手から来ているもので、来序は拍子に乗って打つもので、乱序は拍子に乗らないお囃子です。
この曲の新鮮さは。。。乱序なのに来序というところ。
普通、乱序の時はお囃子のみで三味線が入らないのですが、この『新石橋』の場合は三味線が入ります。という事で、拍子に乗らなければならないので来序なのですね。
『狂獅子』も変わっていますが、『新石橋』も雰囲気変わっていますね。
しかし、けっこう好きかも♪
タテ唄の直吉氏。歌舞伎座千秋楽を終えて駆けつけた演奏ですが冴えていました。
直吉ワールドにどっぷりはまってしまいました。
安定感のある唄で安心して曲自体の味わいを楽しむ事ができたように思えます。
ワキ三味線の長龍郎氏。私はこの方のタテ三味線が聞きたかったです。
今日も、本当に幸せそうに演奏されていました。
この方の三味線は“戯れる”という感じの三味線でけっこう好き系の三味線です。
自分が楽しくなきゃ、お客さんは楽しくないですよね。
美治郎氏の三味線は、さすがいつも今藤政太郎先生のワキを勤めていらっるだけあって安定感がありました。
それにしても、お笛の貴生先生のお笛はするどい感じだなぁ。
お若いからパワーもずば抜けていらっしゃる。

『春秋』
唄    岡安晃三郎・西垣和彦・杵屋巳之助
三味線 稀音家祐介・杵屋弥四郎・松永和寿三郎
笛    藤舎理生
小鼓   藤舎呂英・藤舎花帆
大鼓   藤舎千穂
太鼓   藤舎朱音

上品で綺麗なこの曲。タテ小鼓は藤舎流のキムタク事、藤舎呂英氏でしたが、他は女流演奏家さんの演目でした。
女性らしい、柔らかな温かい感じの『春秋』でした。

春は風、秋は雨。そんな感じの曲です。
私は一下がりの合方が大好きです。春の嵐が吹き荒れる、そんな雰囲気を表しているところです。
この一下がりが終わると胡蝶の合方。ここも好きです。
ここは、連獅子の時もそうですが小鼓の打ち合わせの部分です。
私の中のこの場面は、小さなモンシロチョウが菜の花畑を舞っている風景。とっても軽いのです。ですから、そういった事をイメージして小鼓を打ちます。
でも、先生方の演奏はモンシロチョウという小さく軽いイメージではなく、もうちょっと立派な蝶のように感じました。
こんな感じの表現も素敵だなぁと思いました。
いろいろ解釈があるから、聞く側としては楽しいし、学ぶものとしては勉強になります。
二上がりになって秋に季節は変わります。
秋の冒頭には笛が入ります。
昔は、打ち物も入ったようですが、今ではすっかり打たなくなったみたいです。
クドキっぽいし。。。だからなんだろうなぁ。
しかし、もしかして、研究会だから入るかなと期待してしまいました。
さて、この曲のチラシの部分から段切れまで。ここが私の観察メインの部分でした。
この曲。作調の段階で、お笛の事をまったく考えずに作調したのではと思うくらい。
能管から篠笛の持ち替え、と思ったらまたまた能管という気ぜわしい部分があります。
ちょっと無理があるし、気ぜわしいのは美しくないので、能管のみで表現する方法もあるようなんですが・・・今日は基本どおりでしたね。それも美しかった♪
さすが♪

『羅生門』
唄    宮田哲男・村治祟光・今藤政貴・谷口之彦
三味線 今藤政太郎・今藤美治郎・今藤長龍郎・今藤政十郎
笛    藤舎名生
小鼓   藤舎呂船・藤舎円秀
大鼓   中井一夫
太鼓   藤舎呂悦

四天王の渡辺綱が羅生門の鬼を退治した物語。
つまり、前編にこの曲があって、後編として奪って鬼の腕を茨城童子に奪い返されてしまうというストーリーの『綱館』に続いていくのです。
はじめて聴いた曲ですが、迫力あって素敵でした。
この手の迫力ある長唄は宮田先生にぴったりです。
こういった迫力が求められる曲の大皮はやっぱり中井先生です。すっかり大皮に魅了されてしまいました。関西の太鼓名人の呂悦先生。とってもカッコ良かったです。
呂悦先生は我が師匠とはまた違った味がある演奏家さんです。とっても野生を感じるというか。
いやいや、迫力あって呂悦ワールドに胸が高鳴るのを感じました。

地唄『東山』
唄三弦 富山清琴
笛    中川善雄

迫力ある演奏の後。ほっと緊張が緩む一曲でした。
京都の御茶屋にいるようなしっとりとした雰囲気で、良い感じでした。
富山清琴氏の唄は、女の心の深い深い部分を刺激する心地よいものでした。
そんな唄にのって、またまた美しいものを鑑賞した時に感ずる感動という部分を強く刺激する中川先生の笛はそりゃもう涙がでるほど素敵でした。
中川氏の笛には、今まで何度も訳が分からずに涙を流した経験が。涙腺を刺激する音色なんですよね。

『綱館』
唄    杵屋喜三郎・杵屋吉之丞・杵屋直吉・杵屋君三郎
三味線 杵屋五三郎・杵屋五三吉・杵屋五三助・村尾慎三
笛    藤舎秀啓
小鼓   藤舎呂船・藤舎清之
大鼓   藤舎勘秀
太鼓   藤舎呂雪

本日、一番のお楽しみ演目でした。
しかし、蓋が開くとスリルとサスペンスでした。
いやいや、五三郎先生。とてもとても、九十歳とは思えない。
喜三郎氏の唄はベテランを遥かに超えた頂点の唄声でした。
私は、亡き今藤長之氏のような美声の長唄がとても心地よい。
喜三郎先生の唄は美声で感動というより、ザ・長唄という雰囲気で酔うと申しましょうか、ともに喜三郎ワールドで呼吸をするという雰囲気の芸風。またまた今日も喜三郎ワールドで楽しませていただきました。
我が師匠、お囃子の師匠も三味線の師匠もこの舞台にのっておられて、この上ない舞台でした。
本日、何よりも楽しみにしていたのが、曲舞の部分のお囃子です。
曲舞というのは白拍子の舞。
白拍子というと、ついついヤングな静御前なんかをイメージしてしまうのですが、いやいや、ここは綱の乳母(実は乳母に扮した茨木童子)が舞うところなんですよね。
調べたところによると、この叔母様。すごいお婆さんというイメージですが、実は四十代くらい。
今風な感覚だと、まだまだ若い年代です。それが故に表現が難しいのです。
また、ここは呼吸がポイントの部分です。どのような呼吸をされているのか知りたかった。
私の席は下手側二列目で太鼓のまん前、まるでお稽古場が如く。という事で勉強になりました。

『四季の眺』
唄    今藤尚之・杵屋巳津也・今藤長一郎・味見純・今藤龍之右
三味線 松永忠五郎・松永忠一郎・松永和寿三郎・松永勝十郎・松永直矢
笛    藤舎正生
小鼓   藤舎華鳳・藤舎円秀
大鼓   藤舎呂凰
太鼓   藤舎呂鳳

笛    藤舎推峰
小鼓   藤舎清鷹・藤舎呂英
大鼓   藤舎呂裕
太鼓   藤舎悦芳

お囃子、二チームという構成はとっても面白かったです。
賑やかで良いですね。
また、松永流の三味線は本当に華やかで気持ちのよいものです。
長唄には沢山流派があります。そして、その流派ごとに特徴があったりします。
しかし、最近は東音会系の弾き方が流行しているという感じでピュアな長唄が多いです。
松永流の三味線って、なんか良き時代の長唄を感じさせて下さいます。
とっても華やかで熱い感じ。

今年最後の演奏会。堪能しました。
本当にこうして演奏会に出かけられるという事は幸せな事です。

さて、来年もいっぱいいっぱい長唄に接したいなぁ。