母の葬儀の前日だった。
こちらは悲しみに浸る暇もなく、
僧侶へのお布施やら親戚への連絡やらで、
頭の中は完全に飽和状態だった。
そんな時に、
母が住んでいた長岡市の区の区長さんがやって来て言った。
「長岡市の条例で、一月一日に空き家だった家は金を払わなければならないんだよ。区に払うなら一万円、市に払うなら一万三千円。」
人は弱っている時には、驚くほど素直になる。
私は
「ああ、そういうものなんですか。領収書はいただけますよね」
と、深く考えもせず返事をした。
ところが、その夜になってから急に目が覚めたような気持ちになった。
待てよ、と。
母は十二月半ばに施設へ移ったが、家は三月二十日に売買契約を済ませている。
その間、雪かきも雪下ろしも業者に頼み、お金も払っていた。
電気も水道もそのままだった。
私は週に一度は通い、片付けをしたり、窓を開けたりしていた。
それを「空き家」と呼ぶのだろうか。
しかも、なぜ一月一日に誰も住んでいなかったというだけで、お金を払わなければならないのだろう。
長岡市の条例を調べた。
ない。
新潟県の条例を調べた。
どう読んでも、うちの家がそれに当てはまるとは思えない。
ますます眠れなくなった。
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つづく
