昨日、からだの奥のほうが、きゅっと冷たくなるような緊張に包まれた。
小銭入れの中に、明日の新幹線のチケットを払込済みのSuicaが入っている。その小銭入れが、ない。
ない、ない、とつぶやきながら、二階と一階を何度も往復した。足音だけが、家の中でやけに大きく響いていた。
夕方から探しはじめて、気がつけば三時間。
午前中のことを思い出し、バッグをひっくり返し、車の中をのぞき、なぜか冷蔵庫まで開けていた。
もしかしたらスーパーかもしれない、母の施設かもしれない。そんな考えが、じわじわと現実味を帯びてくる。
もういい、と思った。
明日はもう一度チケットを買えばいい。そうやって、自分をなだめて、眠ろうとした。
そのときだった。
部屋のカーペットを横切った足の裏に、ほんの少しの違和感があった。
そこに、あった。
ずっとそこにあったみたいな顔で、静かに置かれていた。
赤い小銭入れだと思い込んでいたのに、裏側はベージュで、カーペットと同じ色だった。
何度も何度も、その上を通っていたはずなのに、まるで見えないものみたいに、そこにあった。
見つけた瞬間、からだの力が抜けて、遅れてどっと汗が出た。
パジャマの下のTシャツが、じっとりと肌に貼りついていた。まるで、ひとりでフルマラソンを走り終えたみたいだった。
誰にも会わない一日なのに、こんなにも激しく心が動く。
それでも、ちゃんと戻ってくるものがある。
少しだけ、この世界に置いていかれていない気がした。
ウニは一部始終をずっと見てた
ため息ちかでした
