こんにちは。
埼玉県災害ボランティア団体ネットワーク「彩の国会議」です。

前回の記事では、2026年8月から始まる「専門分野別リーダーズ研修」を通じて、県内14分野のリーダーたちの防災リテラシーを底上げし、共通言語を育む取り組みについてお伝えしました。

平時に知識を蓄え、デジタル連絡網を整備した後は、それが激甚な災害地で本当に通用するのかを確かめる必要があります。そこで連載第4回となる今回は、2026年10月から2027年2月にかけて県内各地で展開される「被災想定訓練の実施」について、その全貌と裏側にある狙いをご紹介します。

訓練の核心:あえて「官民の目詰まり」を可視化する高度なシナリオ

過去の大規模災害において、行政の「公助」と民間の「共助・互助」の間に情報共有や役割分担のズレが生じ、結果として被災者への支援が遅れてしまう「支援の目詰まり」が全国的な課題となってきました。

この目詰まりを本番で起こさないために、本事業では一般財団法人日本総合研究所(日本総研)の監修のもと、非常に高度な訓練シナリオをゼロから設計します(2026年7月〜9月作成予定)。

米国連邦緊急事態管理庁(FEMA)の仕組みをベースにした「埼玉版FEMA」の知見を用い、「もしここで指示が途絶えたらどうなるか」「行政のマンパワーがパンクしたとき、民間はどの情報を頼りに動くべきか」といった、あえて支援の連携課題(目詰まり)が浮き彫りになるような厳しい状況をシミュレーションします。

ステップ①:現場の技を磨く「特定分野・機関連携による技術系実働訓練」

訓練は、段階を追ってスケールアップしていきます。

まず2026年10月と11月の計2回、川越市および上尾市内の公共施設を会場として、特定の専門分野に特化した実働訓練を行います。

ここでは、14分野のうち「食支援」「要配慮者支援」「家屋保全(ブルーシート展張などの技術系)」といった、特に発災初期に高い専門技術を要する分野と地元の関係機関が連携します。

研修で鍛えたリーダーたちが中心となり、現場での具体的な受援(支援の受け入れ)やボランティアの派遣計画が現場の動線として機能するかをリアルに検証します。

ステップ②:総仕上げ「14分野網羅型・民間危機管理監指揮訓練」

プロジェクトの総仕上げとなるのが、2027年2月に杉戸町の公共施設で開催される大規模な想定訓練です。

この訓練では、特定の分野だけでなく、食、子育て、家屋保全、ペット、外国人支援など、全14分野をすべて網羅した高度なシナリオが発動します。

県内に設置されたメイン事務所の「つなぐチーム」が中心となり、錯綜する被災地のニーズと14分野の登録団体(約50団体以上)のリソースを、kintoneのリアルタイム連絡網をフル活用してマッチング・コントロールする、「民間危機管理監」としての本格的な指揮訓練(協働型災害訓練)を行います。

さらに訓練終了後には、日本総研による客観的かつ定量的な振り返り(評価指標に基づく検証)を行い、私たちの強みと残された課題を徹底的に可視化します。

訓練は、失敗するためにある

私たちの訓練は、綺麗に成功させて満足するためのものではありません。平時の訓練で徹底的に「失敗」し、官民の目詰まりを出し尽くすことこそが、有事の際に1人でも多くの被災者を迅速に救うための唯一の道だからです。

この過酷な訓練を通じて得られたデータや課題は、ただの反省材料で終わらせることなく、地域防災の未来を変える「次の重要な一手」へと繋がっていきます。

最終回となる次回のブログでは、訓練の検証結果をベースにした「政策提言書の取りまとめ」と、自治体との連携指針となる「ガイドラインの策定」、そして3月に開催される成果共有フォーラムについてお届けします。最後までぜひお付き合いください!

  • 次回予告:【第5回】ボランティアの善意に頼らない社会へ。官民協働のガイドラインと政策提言(近日公開予定)