こんにちは。
埼玉県災害ボランティア団体ネットワーク「彩の国会議」です。

前回の記事では、14分野の専門支援リソースを可視化する「データベース(DB)」や、リアルタイムに情報をつなぐ「kintone(キントーン)連絡網」といった、私たちの活動を支えるデジタル基盤と事務局体制(杉戸町のつなぐチーム)についてお伝えしました。

しかし、どれほど優れたシステムや連絡網を整備しても、それを現場で動かす「人」に十分な知識や共通の認識がなければ、災害時の緊迫した状況下で真価を発揮することはできません。

そこで連載第3回となる今回は、2026年8月からスタートする「専門分野別リーダーズ研修」にスポットを当て、地域防災の要となる人材育成の具体的なカリキュラムについて詳しくご紹介します。

課題:分野ごとに異なる「防災リテラシーの濃淡」をどう解消するか

埼玉県内には、食支援、子育て、家屋保全、ペット、外国人支援など、それぞれの分野で高い専門性を持って活動している心強い団体がたくさんあります。

しかし、それぞれの団体が持つ「防災に対する知識」や「災害時の共通ルール(共通言語)への理解」には、実は組織ごとに大きなバラつきがあるのが現状です。

  • 「自らの専門分野(例:食支援)には強いが、行政の防災体制や他分野との連携方法が分からない」

  • 「災害時の情報共有ツールの使い方に慣れていない」

  • 「発災直後の混乱期に、自組織がどのタイミングで動くべきかの判断基準が曖昧である」

このように、それぞれの分野や団体によってリテラシーに「濃淡」があると、いざkintoneなどの連絡網を動かしようとしても、情報の精度やスピードに差が生まれ、全体の連携が滞る原因になってしまいます。

災害支援を一つの強固な「公的社会インフラ」として機能させるためには、全14分野のリーダーたちが同じ目線に立ち、共通の平時・災害時スキルを身につけることが不可欠です。

取り組み:「民間危機管理監」専門スタッフと外部プロフェッショナルによる強力なカリキュラム

この課題を解決するため、私たちは2026年8月、9月、12月の計3回にわたり、埼玉県内の公共施設を会場として「専門分野別リーダーズ研修」を開催します。

研修では、杉戸町の事務局に籍を置く「民間危機管理監」の専門スタッフが講師を務めるだけでなく、最前線で活躍する外部のプロフェッショナルを招聘し、実戦的かつ多角的な講習を展開します。主なカリキュラムは以下の4つです。

① 支援の心得として一番要となる「安全講習」

他者を支援する上で、最も重要なのは「支援者自身の安全確保」です。今回は、実際に数々の被災地現場で活躍されてきた実績ある支援団体をお招きし、直接レクチャーを受けます。現場の生々しい経験に基づく「二次災害を防ぐための心得」や「現場の危険予知」を学ぶ、本研修の最重要科目です。

② 普段から家庭や事業所でできる「安全対策」

災害対策は、発災時だけのものではありません。平時から身の回りの安全を守るため、第一線で活躍する防災研究者の方に登壇していただく予定です。家庭や、それぞれの団体が運営する事業所において、今日からすぐに実践できる「家具の固定」「備蓄の最適化」「空間の安全化」といったプロの知見を学びます。

③ デジタルツールの実践運用(kintoneの活用)

前回の記事でご紹介した「14分野横断型・リアルタイム連絡網(kintone)」を実際に操作し、発災時を想定した情報の入力、状況把握、他団体への協力要請といった実戦的なコミュニケーションスキルを習得します。

④ 横のつながりを生むクロスセクター(異分野)交流

「食」のリーダーと「要配慮者支援」のリーダーが同じテーブルで議論を行うことで、「アレルギー対応の食事を届ける際に、要配慮者の情報をどう共有するか」といった、分野をまたいだ連携のプロトタイプ(原型)を平時のうちから形作っていきます。

濃淡を平均化し、全員で「一つのチーム」へ

この研修の最大の狙いは、各分野がバラバラに活動するのではなく、埼玉県全体をカバーする一つの大きな「民間危機管理監チーム」としての一体感を醸成することにあります。

外部のスペシャリストたちから「命を守る知恵」を学び、8月、9月、12月と回を重ねるごとに、リーダーたちのリテラシーの濃淡は平均化され、kintoneを通じた情報連携の精度は飛躍的に高まっていきます。平時からお互いの顔と専門領域、そして共通の「安全への意識」を知り尽くしているからこそ、有事の際に「即座に最適な支援を届ける」ことが可能になるのです。

こうして磨き上げたリーダーたちのスキルとネットワークは、いよいよ冬に開催される「本番さながらの過酷な訓練」で試されることになります。

次回のブログでは、日本総研が監修する、官民の目詰まりをあえて可視化するための高度なシナリオに基づいた「被災想定訓練の実施(技術系実働訓練・指揮訓練)」の裏側について詳しくお届けします。どうぞご期待ください!

  • 次回予告:【第4回】目詰まりを防げ!日本総研監修「埼玉版FEMA」連動型・被災想定訓練の裏側(近日公開予定)