(注:この作品は、若干のR-18を含んでおります。直接的表現はありませんが、苦手と感じた場合、すぐに読むのを止めて下さい。作者は一切の責任を負いませんので、ご了承ください。)
俺は今まで蝶だった。
甘い香りのする《花》から《花》へとフラフラと彷徨う蝶。一人の女性を愛することが出来ない。飽きたら次…また飽きたら次の花へと飛んでいく。
けど、その中でも一際目立つ花があった。
その花に…恋をした。
その花には旦那と子どもがいて…そう世間でいう禁断の恋・不倫だった。
絶対犯してはいけない禁忌の筈なのに…花は甘い香りを発して俺を引き付けた。けど…最初は遊びだった。
「ねぇ…旦那と上手くいってないならさ、俺と遊ばない?」
行きつけのバーに傷ついた羽根を休ませに来たのに。自らまた傷つくことをしてしまう。だが、花は花で俺の誘いに乗ってきた。
「ねぇ…准くんはいつも…こんなことをしているの?」
「あぁ…俺は普通の恋は飽きたからね。今は…人妻にしか興味ないよ。」
そういって、どちらかからは分からないが絡み合う指先。そして、白い雪のような肌に赤い花が散り咲く。
自分の家の部屋にあるベッドよりも大きいベッドの上で妖しく光り輝く花。俺が蜜を吸うことで、花は美しい《華》へと変わる。
シーツに付くシワや、鼻につく彼女の残り香。そして、甘ったるい程の彼女の声。全てが俺を…絡めとっていく。
「…子どものくせに。」
確かに。まだ俺は、飲酒も喫煙も許されていない18歳の高校生だ。けど、この関係を続けていくうちにだんだん分かってきた。その言葉は…この情事を終わりにする合図。これを聞くと、俺は蝶から卒業を控える1人の高校生に、華は一人の旦那と子どもを持つ女性へと変わる。だが、いつもはしない軽めの口付けをして2人は手早く服を着た。
シワシワになってしまっている、水色のワイシャツには少々「あぁ…マズイ…脱ぎ捨てなきゃよかった…。」と後悔はしているが、ブレザーを着てしまえばバレることは無いだろう。そんなことより、今俺の心を支配しているのは…
「…離れたく…ないな…」
「ダメよ、貴方はまだ学生なんだから。…また逢いましょう…」
次があるのか。そんな期待を胸に一夜を明かした部屋を後にした。部屋代は最初は俺が払っていたが、密会を交わすうちいつの日か彼女が払うようになっていた。
「…そんなの…大人になってからでいいわよ。どうせ旦那の金なんだから。」
彼女がそう言っているという事もあり、甘えているのだが。
建物を出た俺は携帯の電源を入れた。邪魔をされないため、情事中は電源を落とすようにしている。時間は朝6時を回った頃だった。
学校に向かうには早すぎる時間のため、1度家に帰ってシャワーを浴びるため家に向かって歩き出した。
情事後にシャワーは浴びるが、部屋に置いてあるものは匂いがキツい。いつも、シャワーは家で浴びるようにしている。
ソッと玄関のロックを開けて自分の部屋に向かう。ブレザーを脱いで適当にベッドの上に脱ぎ捨てる。そして、パンツだけを持って浴室に向かった。そして、シャワーの温度をあげて熱いお湯を浴びる。身体に染み付いた彼女の香水の香りが消えるまで、ボディソープで身体が赤くなるまで身体を擦る。
シャンプーを使って汗でパサパサになった髪を洗う。匂いが消えた頃にタオルで水滴を拭き取る。
この時、俺はやっと蝶から人間へと戻る。部屋に戻り、匂いが付いてしまったブレザーにも消臭スプレーをして時計をみる。…7時半。軽く髪にワックスをつけて梳かす。
完璧なセットで洗面所から出ると母さんが立っていた。
「准一、昨日どこにいってたの。」
いつもこれが緊張する。こんなことしているが、母さんに迷惑は掛けたくない。
「よ…快彦の家。…多分…今日も泊まることになるから。」
「井ノ原さん家にも迷惑になるから、程々にしなさいよ。」
母さんは俺のことに関心がない。普通の家ならこうしてすぐに離してくれることは無いだろう。
「行ってきます」
そういって再度カバンを持って家を出た。
さっき通った道をヘッドホンをしてゆっくりと歩く。
そう、今日の夜また俺は蝶となる。
少しだけの人間の姿…退屈な…退屈な時間。
『また逢いましょう』
彼女の…俺の知らない姿の彼女の声が頭に響く。
「またって…いつのことだよ…。」
フッと微笑って退屈な時間を過ごす。
fin.