検査入院2日目。
病院の朝は早い。
昨夜は21時頃に落ちるように眠ったせいか、目覚めは思いのほか早かった。
ただ、目が覚めた瞬間に、「ああ、自分は病院にいるんだ」という現実が戻ってくる。
数日前まで普通の日常を送っていたのに、今は“肺がんの疑い”で入院中。
その事実だけが、どこか不思議だった。
この日は、午前中から頭部MRI検査が予定されていた。転移の有無を確認するための検査だ。
朝から絶食。
病院の朝食がないだけで、なぜか少し気持ちが沈む。
空腹というより、「患者になった感覚」がまたひとつ増えるような気がした。
まずはレントゲン撮影。
そして10時から、人生初のMRI検査へ。
正直、これも少し緊張していた。
CT検査も初めてだったが、MRIはさらに未知だった。
狭い機械の中に入る。
すると、想像以上の大きな音が鳴り始めた。
ガンガン、ガガガガ、ゴンゴン――。
「え、こんなに音がするんだ……」
少し驚いた。
まるで工事現場の中にいるような、不思議な感覚。
身体は動かせない。
ただ横になり、機械音を聞き続ける時間。
検査そのものに痛みはない。
でも、“病気を調べられている感覚”が、妙にリアルだった。
ただ、ひとつだけ救いもあった。
CT検査と違い、腕を真上に上げなくてよかったことだ。実は最近、50肩がかなりつらい。
CTの時は、あの姿勢が本当に苦痛だった。
その意味では、「今後MRIなら少し楽だな」なんて、妙に現実的なことも考えていた。
人間、不安の中でも、意外と小さな安心を探すものなのかもしれない。
MRI検査を終えると、退院手続きと診療費の精算を済ませた。
そして、病院を後にした。
たった1泊2日。
それなのに、ずいぶん長い時間に感じた。
帰り道、診療費の金額を見ながら、また別の不安が頭をもたげてきた。
――検査だけで、こんなにかかるのか。
もちろん、命に関わることだ。
必要な検査なのはわかっている。
でも、現実問題として、お金は減っていく。
しかも、まだ何も終わっていない。
これから本格的な検査結果が出る。
もし治療になったら?
入院は?
抗がん剤は?
仕事は続けられるのか?
収入はどうなる?
気づけば、病気の不安と同じくらい、お金の不安が頭を占めるようになっていた。
病気になるということは、身体だけの問題ではない。
働き方も、生活も、お金も、未来も。
すべてが静かに揺らぎ始める。
そんなことを、私は少しずつ理解し始めていた。
そして、この時の私はまだ知らない。
数日後、自分の肺がんの“正体”を知ることになるということを。
