8月19日。
いよいよ抗がん剤治療と放射線治療の初日がやってきた。
朝4時前には目が覚めていた。
ほとんど眠れていないはずなのに、不思議と眠気はなかった。
緊張なのか、あるいは覚悟なのか、自分でもよくわからないまま朝を迎えた。
まずは体重測定、血圧、検温といったいつものルーティン。
そして9時30分から抗がん剤治療が始まるため、9時にシャワーを浴びて身を整えた。
9時15分頃、中嶋先生による点滴針の挿入。
1回目はうまく入らず、かなり痛みがあった。
それでも2回目で無事成功し、いよいよ治療が始まる。
9時30分。
抗がん剤治療スタート。
まずは利尿を促す生理食塩水や前投薬が続き、その後1時間30分ほどかけて吐き気止めやアレルギー予防の薬が投与された。
そして11時。
最初の抗がん剤「ビノレルビン(ロゼウス)」が約5分で投与される。あまりにも短く、少し拍子抜けするような感覚だった。
続いて生理食塩水を挟み、11時30分から2剤目の「シスプラチン」。こちらは約2時間。
最後に再び生理食塩水を投与し、すべての工程が終了した。
合計8種類の点滴。
気づけば15時を過ぎており、予定より30分ほど押していた。
そして15時45分から、初めての放射線治療。
こちらは驚くほど短く、10分程度で終了した。
あっという間で、むしろ少し拍子抜けするほどだった。
長い抗がん剤治療との対比が妙に印象に残った。
治療の最中、テレビでは夏の甲子園が流れていた。
横浜高校と県立岐阜商業の試合。
優勝候補同士の好カードで、試合はシーソーゲームの連続だった。県岐阜商が先制し、横浜が追いつき、逆転と再逆転が続く。近年まれに見る好試合だった。
だがちょうど一番盛り上がる場面で放射線治療に呼ばれ、最も良い展開を見逃してしまった。
それだけが、この日の小さな“悔い”だった。
治療そのものは合計7時間。
初日ということもあり、身体以上に精神的な疲労が大きかったように思う。
18時30分頃には中嶋先生が回診に来られ、体調確認を受けた。不思議なことに、副作用らしい副作用はまだ何もなかった。それが逆に拍子抜けするほどで、少し安心すら覚えた。
夕食を終えたあとは、久しぶりにゆっくりと読書をした。病院の夜は静かで、時間がゆっくり流れていく。
そして24時。
長い初日を終え、静かに目を閉じた。
治療は始まったばかりだった。

