Future Codeの鬼平、時代の教育を斬る!! from バングラデシュ -幸運をつかむチカ | 国際支援団体•認定NPO法人 Future Code

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国際医療支援団体であり、医療の届かない場所に医療を届ける活動を基本として教育、貧困、公衆衛生など様々な途上国の問題に対し、日本人として何ができるのかを考え、行動を続けています。支援事業は農業/食糧支援、ソーシャルビジネスによる雇用創出等、多岐にわたります。

はじめまして。 
NGO Future Code所属「鬼平こと長谷川平蔵」改め長谷川祥子と申します。

今回、バングラデシュでの看護師育成プロジェクトに参加させてもらったのですが、その話の前に、これからもこのブログを継続して投稿していけるように精進したいと思っていますので、少しだけ私の紹介をさせていただきます。

私はそろそろ中堅でもない看護師16年目。

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日本でICU勤務を経て現在、手術の介助担当として手術室に勤務しています。

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さて、なぜ、私が平蔵なのか…?
小説『鬼平犯科帳』の主人公として有名な江戸時代後期に実在していた人物が長谷川平蔵。

目元しか露出のない手術室ならではの完全装備ゆえの目力と眉間のシワは、今にも叩き斬られそうな勢いだと…

後輩達にとって私は、鬼のようにコワ〜イ先輩みたいです。

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Future Codeバングラデシュ支部で活動されているラーマン真理子さんとのご縁があって看護師教育プロジェクトに初参戦させて頂くことになったのが去年の夏のこと。


そして今年が2年目の活動でした。

去年の私は、国際協力というより、まずバングラデシュって、どんな国?
途上国や新興国の看護師教育って、どうなっているのだろう?
この国の看護教育に関わるために私が養わないといけない具体的な能力って…??

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このように私のプロジェクトは、この疑問と不安から始まったのです。

どちらかというと私は潔癖症に含まれるタイプの人間でして、旅行嫌い、ともかく語学も ままならないのですが、その私が、なぜバングラデシュに行くことを決断できたのか…‼

それは、日本の現在の看護師教育に疑問を感じる部分もあり、自分自身が受けてきた教育と今の教育方針の差が大きく異なり、日本の看護師教育に携わる中、些細なことでイライラする時間を過ごす自分が嫌いになって、行き詰まっていたからなんです。

もちろん昔の教育が良い部分ばかりではありませんし、今の教育も悪い部分だけがあるわけでもありません。
ただ、どうしても私の目から見れば、今の日本の看護師教育は私たちの新人の頃に比べるとずいぶんと変わっていて、厳しさという要素があまりに足りないのではないかとも感じてしまうのです。

私たちの新人の頃は、どんなに苦しくても、怒られる中で自分が気づいて努力しないと成長が得られなかった時だったと思います。
しかし、今は新人に厳しくせず、褒めて伸ばす時代。後輩を守るという事、私たちが時代に合ったやり方を考えるという事。

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もちろん、私も含めてそれぞれに、その時代のその時に、何か学んでおく必要がある事があるはずです。
忙しくても、日本の、望めばいくらでも学べるという環境は恵まれていると思うのです。

「今の時代に合わせた考え方に自分を変えていかないと、ストレスが溜まるだけでいい事ないよ〜!」って、悟りを開いた同期達は、口を揃えて言います。そして皆、自分のことで精一杯。「そうだよな…そう思ってないと私自身の身がもたないよなぁ〜とか、いゃ、私自身に問題があるんじゃないか??」と考える…考える…考えこむ…そして披露困憊。

まぁ…だから、私も自分が変わったふりをしてでも、逃げ出したくても、飛び出したくても、割り切って毎日を生きていくしかないんだ、と。
そんな時代に合わない自分に悩む日々、モチベーションの上がらない状況の中、声をかけて頂き、このNGO Future Code に出会いました。

2014年のバングラデシュ看護師育成プロジェクトで担当したのは実技指導を兼ねた感染予防対策。

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正しい手指衛生(手洗いと消毒)を主な内容とし、手洗い実践からのチェッカー(手洗い訓練キット)でのチェックと手洗い、手袋装着脱のタイミングを考え行動してもらえるようにICUスタッフの日頃、働くシーンを映像化し感染の視点から
「何が問題なのか?」「なぜ、問題なのか?」「では、どうすれば良いのか?」
をディスカッションしました。

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また、手洗い訓練チェッカーを日本から持ち込み「手はこんなに汚れが残るものなのか!」というスタッフの声を聞き『ココが1番汚れている‼』ということを意識してもらえたキッカケとなりました。

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汚れが残る自分の手から患者への感染を防ぐために手指消毒が必要となること、そして全ての個人防護具(特に手袋)が完璧な手指衛生の代わりにはならないけれど、不十分となりやすい部位をきちんと理解して正しい方法で丁寧にタイミング逃さずに交換を実行するという必要な行動変容となったのではないかと思います。

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また、講義の最後には、感染対策Q&A方式で質問を投げかけ答えてもらいました。

そうすると…もう、本当に…本当にビックリするくらいの挙手の嵐でした。こんな光景は日本で私は見たことがありません。

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講義が終了してから、若い看護師が「手を上げたけれど当ててもらえなかったのでQ&Aを もう一度、お願いします」と私に言ってきてくれたんです。この「学びたい‼」と思う気持ちに心を打たれ、脳から涙がでたことを忘れません。

あるスタッフからも「いつ日本に帰るんですか?さみしいです。バングラデシュに来てくれて ありがとうございます。」とも言ってくれました。

私が望んで自分で勝手に取り組むと決めたことで前準備も大変だったとか、慣れない環境で体調もすぐれないとか、ものすごく緊張もしてるし、言葉も通じないしとか…これらの私のマイナス思考は、そんなこと彼らの言葉で全てがプラスに変わりました。

このプロジェクトのフォローを継続して行うためにも、必ずもう一度バングラデシュでの活動をしたいと、この時 思ったのです。


そして今年、2015年はなんと‼
大類代表の呼吸器疾患の管理についての講義にリンクした看護技術に関しての講義と実習も担当いたしました!

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臨床の現場の中で看護師ができる呼吸ケアに関する知識、つまり
「基本的には どういうことなのかな?」「なぜ そうなんだろうか?」「そういえば、あれって どういうことだったかな?」
ということにポイントをおき、基礎知識からの技術を関連させて理解してもらうことを目標といたしました。

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効果的な体位交換と体位ドレナージに絞り、日本のスクイージングの紹介から私がスタッフ自身に実践し体験してもらいました。
「うんうん」と頷き「確かに呼吸が楽ですね」という効果を感じたスクイージングは力を入れるものではないことや、マッサージをしてもらっているような気分になることがスタッフの反応をみて私自身が感じとることができました。

そして講義と併用してBedサイドで直接 患者の体位を整えスクイージングに導くことができたのです。

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「知りたい」「学びたい」「お願いします」「ありがとうございます」という向上心と感謝の言葉。
講義で教えてもらったことをメモをとることや質問する姿勢、積極的な参加姿勢や態度、教えを受ける心得の基本に戻らせてもらいました。
そして、実際に「自分の当たり前が当たり前でない世界」に触れられたことそのものが価値のある事だとも思えています。

さらに、ICU看護師育成プロジェクト以外に私が去年から懇願していた軍の手術室見学も ご配慮頂きました。

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20の部屋に対して6名の看護師。
なんということでしょう。
器械出しから体位固定まで、医師が行うという現状。

ここの手術室看護師の役割と業務内容が全く見えてこなかったんです。
聞きたいことは沢山あったのに、語学の壁にぶつかり何一つ、自分から聞くことができなかった私。

日本では考えられない環境、医療現場に自分が居る このチャンスを逃しているようで情けないやら悔しいやら…しかし、専門職としての自分の新たに足りない部分を見つめなおすきっかけになりました。

おこがましくはなりますが次回、また このFuture Code看護師育成プロジェクトに関わらせて頂けるのなら手術室看護師として、この国、この病院が求める行動に責任の持てる自立した看護師、モラルある看護師にお互いが目指せるように、また その結果、学びにおいて真剣な反省ができることを課題として活動をしたいと考えています。

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このような経験をした上で、自分への反省を含めて、やはり私が昔も今も変わるべきでないと強く思うことは、学ぶという事は、受け身で教育を受けるのではなく、自分の未来を人任せにせず、失敗を認め、明確な目標と強い向上心を持って臨んでいくべきだという事です。
時代には合わないのかもしれませんし、多少厳しい「鬼平」かもしれない私ではありますが、求められる限りは、私ができる限りの真剣さで自分の学びに、そして国境は関係なく後輩の育成に向き合っていきたいんです。

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最後に、今回の私の活動に対し、時間にも限りのある中、さまざまな人がボランティアとして協力してくださいました。
「協力的であった」と一言では片づけられないくらいの温かい言葉と惜しみなく与えて下さった時間、そして共有することを望んで下さった皆様、たくさんの学びをありがとうございます。本当に感謝申し上げます。

いつも短い時間しか居られませんがこの国は生きる力(危機感)と豊かな心を私に感じさせてくれます。

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あとは、確かな学力と技術!とは言っても国の方針や情勢、置かれた環境、保健の歩みなども色々と問題は盛りだくさんで、求められている事、やりたい事が絶対に出来るわけではないけれど…。

準備ができている人にしか幸運は訪れない。

私に言わせれば、国民、そして この国に携わる人々は、幸運を掴み取る能力が抜群なのは確かです。