→命を賭けて、お金の話
→知られざる最近のお金事情(1)
前回、お金の信用がいかにして保たれてきたかについて述べ、その上で誕生した電子マネーの現状について触れました。ただし、これら電子マネーが普及することで生じる弊害も、これまで多数指摘され続けています。
今回はそのあたりから再開します。
【募金財源の喪失】
電子マネーの普及で最も大打撃を受けているのは、私達にも身近なコンビニの募金箱でしょう。最大の財源であった「不要な釣銭」の原資が失われるからです。
私自身は正直、芸能人が24時間テレビ出演料をいくら稼ごうと、街頭募金の多くが寸借詐欺であろうと、アグネス・チャンの日本ユニセフがどれだけ虚像であろうと、あまり関心がありません。そもそも、これらが適正に行われることに期待する側に問題があると思うからです。
ただ、財源そのものが失われるのはとても問題だと思います。
参考:日刊サイゾー(2013.08.09)「「嵐5,000万円、森三中・大島1,000万円……」『24時間テレビ』のギャラ公開報道に波紋」
参考:Wikipedia記事「募金詐欺」
参考:国民が知らない反日の実態「日本ユニセフ協会の正体」
【金融秩序の管理力低下】
さて、私達は普段、財布に現金が入らなければ、お金が増えたという実感は薄いですよね。その実感が無ければ、人は消費を控えてしまいます。つまりモノが売れないのです。
この心理的状態は経済政策にとって非常に重要です。現金を増やしたり減らしても、増えた・減ったという実感が作れなければ、政策効果は半減してしまうからです。
一部の人々は、電子マネーの普及はこうした消費実感を変えてしまうため、経済のコントロールを困難にすると指摘しています。
ただ、私はこれは一面的な見方のような気もします。実際、カード決済が日常化している人の中には、浪費の限度を超えてカード破産する人も少なくありません。つまり、電子マネーが消費を抑制するとは必ずしも言えない気がします。
また他方、国民の財布の現金残高を政府が把握することは不可能ですが、国民のチャージ残高を把握するくらいならば極めて容易です。個人情報保護という問題はともかく、技術的には電子マネーの普及は経済政策の確実性を高めます。だから、電子マネーが必ずしも金融秩序を乱すとは言えません。
【セキュリティー問題】
ところで、これら消費行動とは全く別の議論もあります。
あらゆる電子的セキュリティーに完全なものはありませんから、電子マネーについてもICカードの偽造やハッキングのリスクを指摘する声は少なくありません。実際、テレホンカードやハイウェイカード、パチンコのプリペイドカードなどは、何度となく大量の偽造事件被害に遭ってきました。
ただしこうしたリスクは、年々低くなっていることも事実でしょう。Suicaに代表されるような、残高がICカード側ではなくサーバー側で管理される仕組みの登場は、カードの偽造を極めて困難にしました。こうしたセキュリティーの向上は、電子マネーのハッキングや偽造を、既に現金強奪よりも困難にしたように思います。2万円がチャージ上限のSuicaなどに至っては、現金の入った財布を盗むほうがはるかに効率的ですよね。つまり、セキュリティー課題だけを見れば徐々に解消されつつあるように思います。
参考:Yahoo!知恵袋(2010/2/14)「Suica偽造は不可能なのはなぜ?」
【増大し続ける手数料】
しかしその裏では、セキュリティーを含む決済技術は年々高度化しています。電子決済にはまず、お店の側にICカードや読み取り装置などの端末機器が必要です。またこれら電子決済は、電子マネーの運営会社を経由し通信しなければ行えません。こうした技術の高度化は、利用者と提供者に利便性をもたらす一方、双方のコストも増大させました。
こうした結果、電子マネーによる商取引行為全体のコストは、年々増大しています。これはATM普及の構図と似ていますね。銀行は、窓口人員を減らした利潤は消費者に還元しませんが、ATMの設置・維持費は手数料として徴収します。クレジッドカード会社も、利用する飲食店などに5%もの決済手数料を課しています。駅周辺の商店街に目を向ければ、これらコストを負担できない零細商店だけが苦しむ構図も見え隠れします。
かつてカードやATMが無かった時代、消費者や商店が負担する商取引の手数料は微々たるものでしたが、今やこれらは金融業界の巨大な財源です。だからコンビニも、懸命になってATMを導入します。電子マネーが普及するほど、最終的にはこうした見えざるコストが、いわば消費税の如く、私達利用者へと圧し掛かるのです。
参考:四国新聞社(2006年7月16日)「何なんだ!ATMの手数料」
【破綻リスクと信用】
ところで、Suicaなどの事前チャージ型電子マネーの管理会社が破綻した場合、或いはハッキング等で残高情報が失われた場合など、利用者の資産はどのように保全されるのでしょうか。
現状の法制度では、「資金決済に関する法律」に則って電子マネー決済事業者を認可管理しているようですが、残高保証がされている訳ではありません。もちろん、前払い金の一部を供託する制度も義務付けられていますので、直ちに全額が消滅する訳ではないようですが。
参考:一般社団法人日本資金決済協会「資金決済法の概要」(PDF)
またこれに類似するものとして、QUOカードなどのプリカや商品券、マイレージやヤマダポイントなどの代金利用が可能なポイントカードがあります。前者は運営会社が破綻すると、前出の法律に則りできる限り返還されることになっていますが、やはり全額保証はされません。一方、後者が破綻すると、利用規定の定めに従い、ポイントは消失してしまうのが一般的なようです。
これらを貨幣経済の信用という観点から考えると、まず残高を換金可能な電子マネーは、日本円の価値によって信用が支えられていることになります。しかし換金ができない電子マネーは、その運営会社が破綻し無いことを前提に、信用が成立しています。例えばアメゴールドは一部換金できるそうですが、モバコインは換金規定が無いようなので後者っぽいですね。
【無知こそが信頼の証?】
もちろん、こうした細かなルールを調べていくのはそんなに難しくありませんが、実際に利用する消費者側の多くは、これらルールを正しく把握などしません。だって、「利用規約なんて読まねえよ!」というのが恐らく国民の99%の本音だからです。
しかし一方では、それを細かく理解していないからこそ不信も抱くことなく、電子マネーという貨幣制度は成立しています。
おかしいですよね。やっぱり何度考えてみても、お金って不思議です。
ところでそんな中、世界ではこうした電子マネーの貨幣価値が急激に高騰するというような、全く理解不能な現象が起こっているそうです。何やら、発行者が不明な電子マネーとか、夢の通貨などと言われていて、これが世界ではちょっとしたブームにもなっているようなのです。
「ビットコイン」という名前を皆さんはご存知でしょうか?
とある会話が切っ掛けで、これを調べてみることにしたのですが、実際に調べれば調べるほど頭が混乱してきます。次回はそのあたりをご紹介する予定です。恐らくシリーズ最終回になると思いますが、ご興味があればまたお付き合い下さい。
今回も最後まで読んで下さりありがとうございました。
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