5分でわかるZガンダム社会学 | この国のタブー

この国のタブー

素人がタブーに挑戦します。
素人だけに、それみんな知ってるよ?ってこともあるかもしれませんが。
コメント、質問、大歓迎です。お手やわらかにお願いします。

 続編ですので、前回の投稿はこちらをご覧ください。
 →5分でわかるガンダム社会学



前回記事が好評だったかどうかは怪しいところですが、一度書き始めてみるとなぜか楽しくて止まりません。ということで、タブーじゃないのに続編です。「読むだけでも7分半くらいはかかるけど?」というようなご指摘には、全く気付かないフリをしつつ。

あともう1本書いて、全3部構成でまとめようかなと目論んでいますが、とりあえず書き上がったものから投稿します。前回興味が湧かなかった方は、スルー頂くのが無難です。




【終戦と混沌】

 一年戦争は終結した。しかし宇宙には平和は訪れなかった。
 ジオン公国政府を解体した地球連邦政府だったが、一転して「ジオン共和国」設立を容認する。ただしその統治は名ばかりで、宇宙に住む移民達の民意に沿ったものとは言い難かった。発足した新政権は、地球から送り込まれた特権階級とその手先によって牛耳られ、結局は彼らの意のままだった。
 公式的には降伏したジオン公国軍だったものの、一部軍人達はそれを良しとせず、散り散りになった各地で反政府勢力を立ち上げては、相変わらず衝突を繰り返していた。制御する者のいない群雄割拠の時代の到来。テロやデモが止むことは無く、宇宙移民の心からジオニズムが消えることも無かった。



【紛争勃発と連邦軍独立精鋭部隊の発足】

 終戦から3年後、大規模な紛争が発生する。一部の公国軍残党勢力が、ジオン軍再興を目指して決起。地球連邦に対し再び宣戦布告したのである。彼らは連邦から、戦術核弾頭を搭載した新型モビルスーツを強奪。これを用いて、再びスペースコロニーを地球に落下させることに成功する。やがて紛争は鎮圧されるも、結果的に地表の穀倉地帯は焼かれ、宇宙に対する地球の資源・食糧依存は加速。地球環境もまた、さらに悪化の一途を辿っていた。

 こうした事態を受け、連邦政府内ではタカ派勢力が主流派となる。各地で頻発するデモやテロの鎮圧を目的に、エリート軍人だけを集めた独立精鋭部隊が組織された。移民達に対する弾圧は激しさを増し、地球のタカ派勢力もさらに増長していった。
 ある時、独立精鋭部隊がデモの鎮圧に違法な毒ガス兵器を使用するという事件が起こり、1,500万もの一般市民が虐殺される。しかし連邦政府は、これを伝染病によるものと報じて事件を隠ぺい。真実は、作戦に関わった将兵達にすら知らされず、また部隊上層部が裁かれることも無かった。
 しかし、こうした強硬作戦に対してはさすがに内部からの批判も起こり、連邦軍の一部部隊が組織を離反する事態ともなった。



【赤い彗星と反政府軍の合流】

 一方、赤い彗星のシャアであるが、彼は一年戦争を何とか生き延びていた。この頃の彼の動向には不明な点が多いが、一部のジオン残党達と共に潜伏を続けていたと見られる。
 一年戦争終結から7年が経った後、連邦からの離脱部隊が反政府軍組織を正式に立ち上げると、彼もこれに合流。かつて戦った者同士が共に手を組み、連邦軍の独立精鋭部隊を相手に再び戦いを繰り広げることになった。
 「グリプス戦役」の勃発である。

 しかしこの時のシャアは、以前の彼とは別人のようであった。ニュータイプとしての芽生えを感じさせる一方で、かつての父譲りの神秘的なカリスマは成りを潜め、「クワトロ・バジーナ」という偽名を用いてその素性も明かすことはなかった。
 一年戦争によって抱えた心の傷を、時は癒やしてはくれなかった。ララァを失った悲しみは依然として暗い影を落とし、果たされた復讐劇は彼に虚しさだけを残した。ニュータイプ思想とジオニズム思想の実現という理想は、この時の彼にとっては重荷でしかなかったのかも知れない。



【再び地球へ・そして再会】

 葛藤に苦しんでいたのは、シャアだけではない。赤い彗星との激闘を重ねたガンダムのパイロット「アムロ・レイ」もまた、苦悩していた。自らの行為の正しさを信じられず、ララァを殺してしまった事実が重く圧し掛かる。
 地球連邦軍を勝利へと導いたヒーロー。しかしその類まれな才能はやがて危険視され、彼は厳重な監視の下での幽閉生活を余儀なくされていた。

 しばらくして幽閉生活を脱したアムロだったが、やがて彼もまた反政府軍へと合流する。再び地球に降り立ったシャアは、ここでアムロとの再開を果たす。しかし、同じ目的を抱いてはいても、所詮は同じ道を歩けない者同士。結局、やがてシャアは宇宙へと上がり、アムロは地球に残って戦う道を選択し、二人はすれ違っていく。



【反撃と混沌】

 やがて反政府軍は地球連邦議会へと攻め込み、議会とTV放送を占拠する。ここでシャアは初めて、全宇宙に対して自らの素性を明かす。暗殺された父ジオンが抱いたジオニズムは、危険な思想ではなく平和的な理想主義であること。それがザビ家の欲望によって翻弄されはしたものの、「シャア・アズナブル」の名の下にそれは阻止されたことを。そして、地球に住む人々によって宇宙移民達がどれほど苦しめられてきたかを訴えたのである。
 結局その願いが聞き届けられることは無かったが、この演説は地球連邦政府に賛同的な人々の間にも疑問や不信を抱かせるには十分だった。

 地球での作戦成功によって反政府軍は一段と攻勢を強め、両者は徐々に拮抗していく。さらにここへジオン残存部隊という第三の勢力も加わり、戦いは三つ巴の泥沼と化していった。

 しかし、この戦いに最終的な決着を付けたのはシャアではなく、「カミーユ・ビダン」という一人の少年である。偶然に出会った彼は、生まれながらにしてアムロやララァをも超える傑出したニュータイプとしての才能を持っていた。



【強化人間・そして終戦】

 ところでこの時期、ニュータイプの有効性にいち早く気付いた地球連邦は、人工的ニュータイプの研究に密かに着手する。それを非人道的だと非難する者もあったが、またある者はこう言った。
「宇宙へ上がった人類はやがてニュータイプへと進化する日を迎える。現在も争いが絶えないのは、人類が進化の入口で足踏みをしているからだ。人の進化を自然に委ねていたら、人類はその前に自分で自分を殺してしまう。だからこの研究は進めて然るべきだ。」

 こうして、薬物投与とマインド・コントロールによって人工的に作り上げられたニュータイプ、「強化人間」が誕生する。

 カミーユは、連邦軍が開発した強化人間「フォウ・ムラサメ」という少女と出会い、恋に落ちるが、やがて彼はかつてのシャアと同じ運命を辿ってしまう。新型のガンダムを与えられた彼はその能力を如何なく発揮するも、愛するフォウを失ったその精神は徐々に狂い始める。やがて全ての戦いを終えた時、彼の精神は崩壊してしまうのである。

 戦いには勝った。しかしカミーユは再起不能となった。ニュータイプ同士は、理解し合うが故に互いに惹かれ合い、いつも不幸な結末を招いてしまう。わかっていたにもかかわらず、シャアは何ら手を下すことができなかった。ニュータイプという理想の実現に目前まで迫るも、結局、彼の理想は何ひとつ達成されることは無かった。
 以降、シャアは再び消息を絶つ。



以上が、TVアニメ『機動戦士Zガンダム』を中心とした「グリプス戦役」のあらすじです。前回記事の続きを意識し過ぎる余り、また次回作との関連性を意識するあまり、どうしてもシャア周辺のストーリーが長くなってしまったので、少し脱線気味です。映画の続編がつまらないのと同じ理由ですが・・・。



【ちょっと解説】

79年に『機動戦士ガンダム』がTV放映されてから6年の間をおいて、85年に続編作品のアニメ『機動戦士Zガンダム』は放映されました。連邦VSジオンという対立軸が一変し、その勢力構造は分散し複雑化。共闘と分裂、裏切りや寝返りが繰り返される様子はまさにカオスで、やっぱり子供にはおよそ理解し難い内容でした。

ただ、「可変モビルスーツ」というゴージャスな変形ロボットの登場と、当初300円くらいだったプラモが千円以上に跳ね上がり、1万円を超えるものも登場するなど、バブル経済の世相を反映しているなぁとしみじみ感じます。


【Zガンダム社会学】

ところで現実の世界に目を向けると、東西冷戦が終結した91年から10年経った2001年、「9.11アメリカ同時多発テロ事件」が発生します。これを契機に始まったアフガン、そしてイラクにおける戦争はやがて泥沼化し、後に様々な嘘や捏造も明らかとなりました。かつての東西冷戦という2つの対立構造が崩壊し、徐々に混沌としていく構図は現在まで続いていますし、恐らくこれからも続くでしょう。
 参考:Wikipedia記事「アメリカ同時多発テロ事件陰謀説
 参考:Wikipedia記事「イラク戦争

また他方、日本国内の政治では、リクルート事件や佐川急便事件などを経て自民党単独政権が93年に崩壊。1955年に始まった自民党VS社会党の対立構造が終わります。この時、支持を失ったのは与党自民党だけでなく、野党社会党も同様でした。ここからしばらく連立政権と衆参ねじれ現象の時代が続くわけです。その後は、新生党、新党さきがけ、日本新党といった新党が乱立し、さらに新進党を経て民主党が誕生。2009年に政権交代を果たすという流れです。
 参考:Wikipedia記事「55年体制

対立構造の崩壊と、その後の混沌。何だかとても似ていると思いませんか。

Zガンダムが描かれたのは、時系列ではこれら事件よりも前です。もちろん、同じような物語は歴史を紐解けば多数見つけることができますし、同様の文学作品も少なくないでしょう。しかしそれでもなお、ある気持ちを抱かずにはいられないのが、ガンダム好きたる所以です。当時の言葉を使って表現すれば、「まさにシンパシーを感じる」というのが一番しっくりきます。大人になるほどに魅力を感じてしまうのも、妙に納得できてしまいます。


なお、今回と次回の記事については、原作の史実や世界観と相違無いか、念のため友人でニュータイプの、カミーユ君とセツナ君にも校閲にご協力頂いております。ご両名に感謝いたします。

ということで、今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。タブーから思いっきり脱線しっぱなしですが、次回も引き続きお楽しみいただければ幸いです。



面白かったらランキング上げて下さい→

5分で分かる逆襲のシャア社会学に続く