月経不順や排卵障害…もしかして「PCOS」かも?
「月経の間隔がばらばら」「基礎体温が安定しない」「妊活がうまくいかない」──こうした悩みをお持ちの方へ。
それは「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」の可能性があります。PCOSは、卵巣で卵胞が成熟しにくく排卵がうまく起こらない疾患で、排卵障害を原因とする不妊症の中で最も頻度が高いとされています。
日本の最新治療指針が明らかに
2024年、日本産科婦人科学会は、PCOSの治療指針を改訂しました。これは、保険診療制度や国内外の研究成果を踏まえたもので、PCOSの診断や治療において、よりわかりやすく、実践的な道筋が示されています。
治療は「段階的アプローチ」で行います
以下が、日本のPCOS治療の基本的な流れです。
- Step 1:まずは生活習慣の見直し:特にBMI(体格指数)が高い方には、減量によって排卵機能が改善することが報告されています。食事療法・運動療法が最初の選択肢になります。
- Step 2:排卵誘発薬の使用:内服薬(レトロゾール、クロミッドなど)で排卵を促します。比較的副作用も少なく、妊娠を目指す最初の段階で使用されます。
- Step 3:注射による排卵誘発:内服薬が効かない場合は、HMG注射やゴナドトロピン注射による卵胞刺激を行います。排卵のタイミングを医師が細かく管理します。
- Step 4:人工授精や体外受精へステップアップ:上記でもうまくいかない場合や、他の要因(精子所見など)を併せて考慮し、人工授精や体外受精を検討します。
PCOSは“治す”というより、“コントロールする”疾患
PCOSは体質的な要素が強く、完全に「治す」ことは難しいと言われていますが、うまくコントロールすることで妊娠を目指すことが可能です。
大切なのは、正しい診断と、一人ひとりに合った治療ステップを踏むこと。自己判断せず、専門の医師と一緒に進めていくことが妊娠への近道です。
妊娠を望む方へのメッセージ
PCOSと診断されても、妊娠できるチャンスはしっかりあります。最近では、若年女性への早期診断の重要性や、家族歴(母の高血圧や父の肥満など)との関係も注目されています。
少しでも気になる症状があれば、どうぞ早めにご相談ください。治療の選択肢が増えた今、あなたに合った方法がきっと見つかります。
≪出典≫
- 日本産科婦人科学会雑誌 第77巻 第6号「本邦における多囊胞性卵巣症候群の治療指針」2025年6月
- 日本産科婦人科学会ウェブサイト https://www.jsog.or.jp