■ご質問内容
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の女性が妊娠出産した場合、発達障がい児が生まれる確率がPCOSでない場合よりも上がるとありました。日本においても同様の研究また結果が出ているのでしょうか?
■当院からの回答
ご質問で記載されている記事は、Maternal polycystic ovarian syndrome and early offspring development(Hum. Reprod., 33 2018, 1307–1315)かと思われます。
この「The Upstate KIDS study」という研究では、母親がPCOSである場合、出生児が3歳までに発達遅延のリスクが高くなることが示唆されました。この研究はニューヨーク州で2008年から2010年に出生した5,388名の子どもを対象に行われ、特に女児や多胎児、母親がPCOSを治療しなかった子どもにその傾向が見られました。また、これまでの研究でも、PCOS女性や高テストステロン状態がASD(自閉症スペクトラム)やADHD(注意欠陥多動性障がい)と関係する可能性が示されています。
ただし、この研究結果をそのまま日本人に当てはめることは慎重であるべきです。日本において、同様の大規模な臨床研究や疫学調査は行われておらず、PCOSの病態が日本と欧米で異なる点(アンドロゲン過剰症:高テストステロン状態を示す例は少ない)も考慮する必要があります。
日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会(2024)の診断基準によると、日本のPCOSは以下の1〜3の全てを満たすものとされています:
- 月経周期異常
- 多嚢胞卵巣 または AMH高値
- アンドロゲン過剰症 または LH高値
以上のように、PCOSと発達障がいの関連性についてはまだ完全に解明されておらず、さらに研究が必要とされています。