【ご質問内容】

「この周期に採卵予定になっているのですが、夫の出張と重なる可能性があります。もし重なった場合、採卵ができなくなるのでしょうか?」

 

【当院からの回答】

採卵日は、卵胞のサイズやホルモン値を考慮して、卵子の成熟が最も見込まれるタイミングで2日前に決定します。

 

月経周期のD12~18日目頃に採卵を行っていることが多いですが、個人差や周期による変動も大きく、事前に採卵日を決めることはできません。

 

採卵周期には、月経3日目、7~8日目、10日目前後と複数回の診察が必要で、採卵タイミングが近づくにつれて予測と実際のズレは小さくなると思われますが、最終的な採卵日の決定は2日前になり、採卵2日前の夜にトリガー(注射や点鼻薬)を使用し、その2日後の朝に採卵を行うことになります。

≪対応策≫

  1. 診察医に相談

    まずは診察医にご相談ください。周期のスタート時に出張予定があり、採卵日に重なりそうな場合は、体外受精の延期も含めて相談させていただきます。
  2. 精子の凍結

    すでに採卵周期がスタートしている場合には、出張と重なる場合の保険として精子を凍結保存しておくことが考えられます。ただし、凍結精子による受精率や培養成績への影響は、以下のように精子所見により異なると考えられます。

≪精子凍結の影響について≫

  1. 正常精子の場合 (社会的適応での精子凍結)

    • ドナー卵子を用いた初回顕微授精を実施した7969組のカップルの後方視的検討によれば、精液所見が正常な男性を対象に、新鮮精子を用いた2865名と凍結精子を用いた5104名の培養成績・妊娠成績には有意差が認められませんでした(Hum Reprod 2023; 38: 400)。
    • 多くの研究は重度の男性因子不妊患者を対象とされており、精液所見が正常な男性についての検討は限られています。
  2. 厳しい精液所見の場合 (医学的適応での精子凍結)

    • 精子凍結が欠かせない場合があります。精子を回収できるチャンスが限られているためです。一方で、凍結によるダメージも考慮しなければなりません。
    • 精巣内精子(TESE精子)の場合には新鮮と凍結に有意な違いはありませんが、射出精子(クリプト:わずかに射出される精子がある)の場合には新鮮精子が有用であることが示されています(Fertil Steril 2017; 107: 1148)。

 

これらの情報を基に、出張の際の対応策を検討し、診察医とご相談ください。