卵巣刺激ホルモン注射フォリトロピンデルタの有効性と特性について

  • フォリトロピンデルタ(レコベル®)は、体外受精(IVF)において卵巣刺激を行うための新しいヒト由来リコンビナントFSH製剤です。
  • 最近のシステマティックレビューおよびメタアナリシスによると、フォリトロピンデルタはフォリトロピンアルファやフォリトロピンベータと同様の有効性と安全性を有していることが示されています。

 

有効性

  • 主要な評価項目として出生率、中等度/重度の卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発生率、副次評価項目としては回収卵子数、妊娠継続率、胚盤胞数、副作用発現率などが含まれます。
  • フォリトロピンデルタはフォリトロピンアルファ・ベータと比較して、出生率やOHSSの発生率に有意差は認められず、同等の有効性を持つことが確認されています。
  • 回収卵子数に関しては若干少ない傾向が見られるものの、AMH値が低い患者ではフォリトロピンデルタの方が回収卵子数が多いという結果も示されています。

 

特性

  • フォリトロピンデルタの特徴的な特性の一つは、個別アルゴリズムに基づいた投与が可能である点です。
  • AMH値および体重に基づき、至適な採卵数を目標とする個別投与量アルゴリズムが設定されています。
  • AMH値が低い場合には12μg/日の投与が推奨されており、AMH値が高い場合は、体重に応じて投与量を調整します。
  • これにより、患者一人一人に適した最適な卵巣刺激が可能となり、OHSSリスクの低減が期待されます。

 

安全性

  • 安全性に関しても、フォリトロピンデルタは良好な結果を示しています。
  • メタアナリシスの結果、フォリトロピンデルタ使用群における副作用の発生率は他のフォリトロピン製剤と同等であり、特に重篤な副作用の発生率も低いことが確認されています。
  • アンタゴニスト法との併用により、さらにOHSSリスクを低減することが可能です。

 

まとめ

  • フォリトロピンデルタは、個別アルゴリズムに基づいた投与が可能で、フォリトロピンアルファ・ベータと同様の有効性と安全性を持つ体外受精用のリコンビナントFSH製剤です。
  • 患者の個々の状況に応じた最適な卵巣刺激を実現し、OHSSリスクを低減することが期待できるため、今後の治療において有力な選択肢となるでしょう。

 


論文出典

  • Komiya, S. et al. (2024). Systematic review and meta-analysis of Follitropin Delta versus Follitropin Alfa and Beta. Reproductive Medicine and Biology, 23(1), e12573. doi: 10.1002/rmb2.12573
  • Porcu-Buisson, G. et al. (2024). Real-world use of Follitropin Delta in France. European Journal of Obstetrics & Gynecology and Reproductive Biology, 293, 21-26. doi: 10.1016/j.ejogrb.2023.12.011
  • Qiao, J. et al. (2021). Randomized controlled trial of personalized Follitropin Delta dosing regimen in Asia. Human Reproduction, 36(9), 2452-2462. doi: 10.1093/humrep/deab155