【概要】
- 精子は、卵管膨大部まで到達する必要があります
- 排卵した卵子は、卵管采に取り込まれ卵管膨大部に移送されます
- 卵管膨大部(卵管の腹腔側に近いところ)で、卵子と精子が受精します
- 卵管が詰まっていることが、不妊原因になっていることがあります
- 卵管が詰まっていないかどうか、また閉鎖部位は、子宮卵管造影検査で確認します
- 両側卵管に決定的な問題点がある場合は、そのことを取り除かなければ、タイミング法や人工授精では妊娠できません
- 卵管間質部(卵管と子宮の連結部)閉鎖に対しては、卵管鏡下卵管形成術(FT)という治療法があります
- FTにより卵管の疎通性が改善できれば、自然妊娠に繋がる可能性があります
- なお、体外受精は卵管に問題が残っていても妊娠を可能とする治療法です
【卵管鏡下卵管形成術FT】
- 卵管の疎通性が改善し、自然妊娠できる可能性があります
- 日帰り治療が可能です
- 膣から子宮腔を介してのアプローチで、腹部に傷は残りません
- 保険診療で高額療養制度(月単位の限度額までの支払い)の対象になります
【FTの適応】
- 卵管間質部(卵管と子宮の連結部)の片側または両側に閉鎖や狭窄がある
- 卵管癒着など卵管間質部以外の卵管病変を強くは疑わない
- 卵管閉鎖/狭窄の原因が器質的病変(子宮筋腫など)によるものではない
- 高度な精子異常はない(卵管病変改善しても妊娠目途が立たない)
- 抗精子抗体が強陽性ではない(卵管病変改善しても妊娠目途が立たない)
- 女性加齢や抗ミュラー管ホルモンAMH低値では体外受精への早期ステップアップも考慮する
【実際の手順】
- 術前に子宮頚管を拡張します
- 静脈麻酔を行います(意識はない状態で行います)
- 麻酔時には生体監視装置を装着します
- 手術時に無意識に身体を動かすことがあるので抑制帯を使用します
- FTカテーテル(細い内視鏡=卵管鏡を内蔵)を使用します
- 子宮内腔(卵管角)から卵管間質部入口にFTカテーテルを挿入します(当院では子宮鏡で確認しながら行っています)
- カテーテルの卵管鏡で卵管内を観察しながら、カテーテルに仕組まれているバルーンを膨らませながらカテーテルを進めます。
- このカテーテルのバルーンの膨張で閉鎖部位の拡張・疎通をはかります
FTは卵管口から6cmまでの対応になります。これより先まで閉鎖があった場合は対応できません。また、卵管水腫や卵管癒着に対しての治療は、腹腔鏡または開腹手術が必要になります。
【治療効果の予測】
- FTによる卵管の疎通率は80%程度です
- FT実施できない、FTしても疎通性が改善されない場合があります
- 卵管閉鎖以外に不妊原因がなければ、妊娠成立の可能性が高まります
- FT後の症例あたりの妊娠率は30%前後と考えられますが、この成績は女性年齢や原因により大きく異なります(卵管以外の問題は残ります)
【手術後の治療】
- 疎通性が改善されなかった場合は、体外受精をお勧めします。
- 疎通性が回復しても6か月以上経過して妊娠されていない場合は、体外受精をお勧めします。
【リスクと副作用】
- 器具による子宮頚管の把持や牽引、卵管鏡の挿入に伴い、ある程度の出血や疼痛があります
- 卵管鏡の挿入時に、卵管壁の穿孔などの合併症を生じる可能性があります
- 感染症があれば、再燃や拡大する可能性があります
- 麻酔薬や鎮痛剤、予防的に投与する抗生物質にアレルギー反応が見られる場合があります
【費用】
- 健康保険が適用され、高額療養費制度の対象になります
- FTして疎通性が改善されなくても費用は発生します
卵管間質部閉鎖があるとき 体外受精へのステップアップをすぐに考えないのであれば卵管鏡下卵管形成術FTをおすすめします