着床前染色体異数性検査PGT-Aは、胚の一部細胞(将来胎盤となるTE細胞)を採取する侵襲的な技術であり、「周産期予後や幼児期の健康に悪影響がないのか」という問題が議論されています。

 

最近報告されたスウェーデンの研究によると、

「着床前検査を受けた子どもたちと体外受精/顕微授精によって生まれた子どもたちを比較したところ、早産や低出生体重のリスクには差は認められませんでした。また、先天性異常率や幼児期の健康状態についても、差はありませんでした。

 

これらの結果から、着床前検査は周産期予後や幼児期の健康に悪影響を与えるわけではないことが示唆されています。ただし、母体の転帰については、着床前検査後の妊娠では前置胎盤や帝王切開分娩の割合が高くなることが報告されています。

 

また、着床前染色体検査PGTの有無による周産期予後に関するメタアナリシス(19論文785,445名)が報告されています。


Fertil Steril 2021; 116: 990

調査項目には、出生時体重、低体重児、超低体重児、出生時妊娠週数、早産、胎児奇形、胎児発育遅延、性比、帝王切開、妊娠高血圧、妊娠糖尿病、前置胎盤、常位胎盤早期剥離、癒着胎盤、前期破水が含まれています。調査結果から、以下の項目で有意差が見られました。

  • 妊娠高血圧の頻度がやや増加する
  • 凍結胚移植では、早産と胎児発育遅延がやや高くなる傾向がある

PGTは世界中で広く実施されており、様々な統計が報告されています。

妊娠予後や周産期予後については心配されることもありますが、この研究はPGT胚移植の周産期予後に関するメタアナリシスを行い、妊娠高血圧以外の合併症に特別な問題はないことを示しています。

 


ただし、メタアナリシスには異質性(研究間のばらつき)やバイアス(選択バイアスや出版バイアスなど)などの問題点も存在します。著者自身も、サブグループ解析で出現したり消失したりする項目については今後の検討が必要であると述べています。


これらの研究結果を踏まえ、着床前検査を受けるかどうかは、慎重に判断する必要があります。医師とよく相談し、リスクとメリットを十分に理解した上で、カップルにとっての選択ができるように、カウンセリング、ご夫婦での相談が大切ですね。