■ご質問内容
胚質改善のために、男性にも何かできることはないでしょうか?
■当院からの回答
★精子のDNA ダメージ(損傷)は、精子染色体異常とリンクし、胚発生率の低下、着床率の低下、流産率の上昇に関与する可能性があります。
精子DNA損傷に関するレビュー
Role of sperm DNA fragmentation in male factor infertility: A systematic review. Arab J Urol 2017; 16: 21
精子のDNA損傷に関する論文を解析した結果、自然妊娠や人工授精妊娠では、精子のDNA損傷と妊娠成績に負の相関を認めました。
ART妊娠(体外受精、顕微授精)では、精子のDNA損傷と妊娠成績の関連は弱いですが、精子のDNA損傷が高いと流産率が高くなることは間違いありません。
★ 精子DNA損傷検査は、以下の場合に有意義な検査であると考えられます。
- 精索静脈瘤の手術適応を確認したい場合
- 原因不明の不妊あるいは不育症の場合
★ 精子 DNA損傷を減らすために男性ができること
- 禁煙する:喫煙は酸化ストレスを増加させます
- 精巣の血流を悪くしない:自転車、バイクに乗りすぎない
- 精巣の温度を上げない:ブリーフよりもトランクス・長風呂、サウナは控える
- 禁欲期間を短縮する:精子は酸化ストレスに弱いため長期精巣内に停滞する精子の運動率は低下
- バランスのとれた食事をとる:抗酸化物質(Lカルニチン・コエンザイムQ10)や亜鉛などミネラル
- 太りすぎに注意する:男性のBMIが高いと精子の状態は不良になる
- 内服の育毛剤に注意する:育毛剤(5αリダクテース阻害剤)は精子を不良にする
- 精索静脈瘤がないか確認する:グレード2以上の精索静脈瘤があり、精子不良や反復ICSIで不成功なら精索静脈瘤手術を検討する