体外受精や顕微授精などの生殖補助医療において採卵を予定する場合、排卵してしまうと卵子が採取できなくなってしまいます。このため調節卵巣刺激法では下記の対応を行います。自然周期や低刺激法(クロミッドやフェマーラなど)では、この排卵抑制ができないので、採卵前に排卵してしまう危険性が高くなります。

 

  1. 黄体ホルモンPPOS法または性腺刺激ホルモン放出ホルモン反作動薬アンタゴニスト法または性腺刺激ホルモン放出ホルモン作動薬ロング法/ショート法)でLHサージを抑制しながら、FSH/hMG製剤の連日注射で卵巣を刺激します。
  2. 卵胞が成熟したときには、LHサージの代用(トリガー)としてヒト絨毛性性腺刺激ホルモンhCG注射または性腺刺激ホルモン放出ホルモン作動薬GnRH アゴニストの点鼻薬を使用し、2日後の採卵を決定します。
  3. ダブルトリガーとは、このhCG注射とGnRH アゴニスト点鼻薬の両方をトリガーとして使用する方法です。

 

★ダブルトリガーは、卵巣刺激に高反応の場合に有効であることが知られていましたが、

卵巣刺激に対する反応性が正常な場合については、これまで明らかにされていませんでした。

 

下記の論文は、未熟卵が多いとき、その採卵周期の培養成績や妊娠成績が低下することを報告しています。

 

Fertil Steril 2022; 118, in press、RBMOnline 2019; 39: 580

  • 未熟卵が多いと(その採卵周期の)培養成績や妊娠成績が低下することを報告しています。
  • 未熟卵が多いと(その採卵周期の)2PN率/採卵数、臨床妊娠率、出産率が有意に低下することを報告しています。

 

下記の報告は、ダブルトリガーは卵巣刺激で正常反応を示す場合にも高反応を示す方にも有効であることが示されています。

 

Fertil Steril Rep 2021; 2: 314

  • 新鮮単一胚盤胞移植を実施する35歳未満の女性290名を対象に、アンタゴニスト法で卵巣反応に合わせて刺激を行い、トリガーにはGnRHアゴニスト注射+hCG 1500IUを用いました。
  • 採卵数30個以上(32〜41個)を高反応、30個未満(17〜24個)を正常反応と定義し、2群間を後方視的に比較しました。
  • 2群間の臨床妊娠率(69.3% vs. 67.0%)・生産率(60.0% vs. 60.5%)には有意差を認めませんでした。黄体補充にはプロゲステロン50mg/日を用い、コースティング、カベルゴリン、バイアスピリンは用いませんでしたが、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は1例も認めませんでした。

 

現在、hCG注射の納品不足もあり、当院では低刺激法や調節卵巣刺激法(PPOS法・アンタゴニシト法)で、低採卵率であったり未熟卵が多かったりした症例に、ダブルトリガーを適用するようにしています。