■ご質問内容

採卵前の卵胞チェックで、育ちがあまり良くないと言われた数日後に採卵決定となったことがあります。卵胞の発育スピードが遅かった周期に採卵した場合、受精卵(胚)グレードは低くなる確率が高くなるのでしょうか?

 

■当院からの回答

受精卵のグレードは、卵子だけでなく精子の遺伝情報や受精後の胚の発育状況によって影響を受けますので、受精卵の発育が良くないからと言って卵子が悪いとは限りません。

 

女性ホルモン(エストラジオール)の上昇が不良であった場合や、卵胞サイズが小さかった卵胞から採取された場合には、卵子が未熟な傾向を示す可能性があります。

 

卵胞の発育速度(卵胞サイズが早く大きくなる場合とゆっくり大きくなる場合)は、卵子の質に直接影響しないと考えられています。

 

ただし、子宮内膜の状態はよくない(着床の窓のズレ)可能性がありますので、卵胞の発育速度が遅い場合は着床環境は少し低下すると考えられます。このような場合は、全胚凍結し別周期に融解移植することをおすすめしています。

 

PGT-Aによる正常胚を用いた報告をご紹介します。

 

 Hum Reprod 2020; 35: 545

ドナー卵子提供者で顕微授精を実施する方を対象に、卵胞の直径を測定後に穿刺吸引を行い、1個ずつ卵子が識別できるようにして培養しました。

 

卵胞の大きさは卵子の成熟率と強い正の相関を認め、胚盤胞到達率と弱い正の相関を認めましたが、卵胞の大きさと正常受精率との関連はなく、胚盤胞のグレードや正常胚率との関連もありませんでした。

 

卵胞が小さいからと諦めるのではなく、成熟卵が取れれば均等に正常胚のチャンスがあると考えられます