チョコレート嚢腫(子宮内膜症性のう胞)を持つ方は多くおられます。

子宮内膜症は、子宮内腔の表面だけにあるはずの子宮内膜が異所性(本来でないところ)に存在する病態です。この異所性子宮内膜が卵巣内にあり、月経血が溜まった状態が濫觴子宮内膜症(チョコレートのう胞)ということになります。      

 

Fertil Steril 2013; 99: 1714

両側にチョコレート嚢腫のある方において、嚢腫を取らずに採卵する場合でも、卵子の採取数は2.7個少ないものの、受精率や妊娠率は嚢腫のない方と同等であることが示されました。

 

この研究では、39名の両側にチョコレート嚢腫を持つ女性(チョコレート嚢腫群)と、嚢腫のない対照群の78名を対象に、体外受精での卵巣刺激の反応性と卵の質について調査されました。

 

結果として、チョコレート嚢腫群では超音波における発育卵胞数が有意に少なく、採取できた卵子数も有意に少ない結果となりました。しかし、成熟卵子数、受精率、トップランクの胚率、着床率、胚移植あたりの妊娠率、胚移植あたりの生産率においては、チョコレート嚢腫群と対照群とで同等の結果が得られました。

 

チョコレートのう胞を持つ方々には以下の注意点があります。

まず、手術による影響です。卵巣を手術すると卵子の数が減少する可能性があります。特にチョコレート嚢腫の場合、卵巣の正常な部分と異常な部分の境界をうまく剥がすことが困難であり、正常な卵巣組織も摘出される可能性があります。

 

一方、卵巣を手術しない場合を考えてみましょう。チョコレートのう胞が片側の卵巣のみにある場合には、チョコレートのう胞側の卵巣からの自然排卵はしにくく、ほとんどの場合正常な側の卵巣から排卵することが知られています。

 

体外受精などの生殖補助医療での採卵に際して卵巣刺激をした場合には、両側の卵巣からほぼ同数の卵子が採取できることが報告されています。

 

本論文の結果を併せて考えると、チョコレートのう胞を手術しない場合、採卵で取れた卵子には質的な問題もないことがわかります。